W 県警の悲劇

読んだ本

葉真中顕さんの『W 県警の悲劇』を読みました。
葉真中さんの小説は『コクーン』以来です。

コクーン
葉真中顕さんの『コクーン』を読みました。葉真中さんの小説は『Blue』以来です。 今回の小説は…なんというか…とても『問題作』ですね…。1995年3月20日、『地下鉄サリン事件』が、起きなかった世界の話です。もちろん、この事件だけがポッと抜

何やら顔に影を落とした二人の女性、その脇に1匹の犬。乱雑で赤に満ちたライトで照明で白く浮き出る…。表紙からしてなんだか不穏な感じがひしひしと伝わってきます。
読み終えてから気付いたんですが、左の女性は松永菜穂子警視(後に警視正)、右の女性は熊倉清巡査ってことでいいのかな。犬については…事情により割愛します(笑)。

6個の短編が入っていますが、すべて『W 県』での出来事であり、松永警視がキーパーソンとなって横断している感じです。
…W 県って? わかやま県? と思ったんですが、『W の悲劇』から取られているとのこと。あー、有名だからタイトルは知ってるけど、読んだことはないな…。なるほど。
そもそも『W の悲劇』自体が、エラリー・クイーンの『X の悲劇』『Y の悲劇』『Z の悲劇』のオマージュであり、『Woman』の意味も併せ持つとのことなので、その部分を引き継いでいる感じなんですかね。
だったら、主人公(?)の松永警視は『W』で始まる名字か名前の方が良かったのでは? などと思ってしまいましたが、素人の浅知恵ですかねー。

一番印象に残ったのは、3番目の『ガサ入れの朝』です。
「ちょっとお悩みのある女性なのかな」なんて感じで読んでいたんですが、なんだかわからないけど違和感が少しずつ出てきて。
途中で「ひょっとして?」と気づくことができました。ちょっと嬉しかった。
『彼女』の一途な愛とそれに応えようとする野尻さんの関係が良かったですね。この話は爽やかな気持ちを抱かせてくれました。

それ以外について。
第1話『洞の奥』。
これは…嫌な気持ちになりますねー! いや、褒め言葉ですよ、もちろん。
人間誰しも、一皮むけば汚い部分を持っていると思いますが、自分がある意味神格化してしまった人の汚点は見ていられないのかも知れませんね。
清さんはここで『片付け方』を習得してしまったんですね。これが直後にもその後にも活かされてしまうとは。いやはや。
少しだけ、以前読んだ『神様の裏の顔』を思い出しました。まぁ、あっちは錯覚だった部分が大半ですが。

神様の裏の顔
藤崎翔さんの『神様の裏の顔』を読みました。藤崎さんの小説は初めてです。 藤崎さんは高校を卒業してから6年間お笑いコンビの芸人として活動されていて、その後はアルバイトなどをしながら小説を書かれていたそうです。なるほど、『神様の裏の顔』はなんだ

第2話『交換日記』。
警官2人についてはハッピーエンドでよかったです。2段階もミスリードされてしまって悔しかったですね。完全に「ろりこんさん」だと思っていました、ごめんなさい。
あとは…『祐司くん』はとてもかわいそうだと思いました…。彼の心の傷が癒えますように。

第4話『私の戦い』。
迷惑 YouTuber を逆手に取っての復讐でしたが、『W 県警』に対する信頼が損なわれてしまって、巡り巡って自分の不利益に鳴るのでは!? と思ってしまいました。
まー、それほど腹に据えかねていたのかな、とは思います。
警察にはまだまだセクハラが許容されていそうな雰囲気がありそうですねー…。
あ、警察官の知り合いとかいないので、完全にイメージです。

第5話『破戒』。
『吉川線』を逆手に取った『犯行』でした。たしかに、普通のタイプの偽装だったら念入りに捜査されるでしょうけど、『逆』だったらされないかもしれないですね…。うーむ。
これが『罪』だとわかっていても、これからかけるであろう迷惑のほうが大きいと考えて、そういう選択をしてしまったんでしょうけどね。ここは、先日読んだ『雪冤』にも似ているな、と思いました。

雪冤
大門剛明さんの『雪冤』を読みました。大門さんの小説は『確信犯』以来です。 前回の『確信犯』を読んだとき、後ろについている解説に「是非とも『雪冤』も読んで欲しい」を書いてあったので、「じゃあ読むか」ということで読みました。意外とひねくれてそう

最終話『消えた少女』。
これはねー、完全に勘なんですが、『犯人』は『あの人』なんだろうと結構早めに気づきました。
ただ。まさかこんな結末になるとは!
いやー、運転怖い。私はもう運転しないもん。ゴールド免許20年ですから。大学卒業してから運転してないもん。
ここでこんな風に道を絶たれるとは、思ってもいなかったでしょうね…。こういうときって、どうしたらいいんでしょう…? まぁ、普通に考えれば『自首』ですけど…。
W 県警の女性の地位向上、彼女ができるのはここまで、でしたね…。残念です。

この小説は、2019年にドラマ化されていたようでした。
主演の松永菜穂子警視(正)は芦名星さんだったそうです。ちょっと年齢が若すぎる感もありますが、凛とした雰囲気がマッチしていると思いました。本作が初主演で最後の主演作だったそうです。
ちょっと驚いたのは、熊倉清が佐藤仁美さんだったことです。イメージとしては新米に近い感じの警察官という感じだったので(佐藤さんが合わない、という意味ではないです)。芦名さんと対峙するラストシーン、見てみたかったかも。
そして、『千春』役が優希美青さん。…ということは、どういうドラマに仕上がっていたんでしょうか!? 最後の方で『魔法が解ける』的な演出だったのかな。

いやー、今回もとてもおもしろかったです。

Kindle Unlimited で読みました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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