N のために

読んだ本

湊かなえさん『N のために』を読みました。
湊さんの小説は『サファイア』以来です。

サファイア
湊かなえさんの『サファイア』を読みました。湊さんの小説は『境遇』以来です。 今回の小説は短編集でした。すべて宝石の名前を冠した作品です。内容も多岐に渡っていて、さすが湊さんだなと。『宝石』の話ということもあり、やっぱり女性がメインになるもの

この『N のために』はドラマ化もされた作品ですね。
主人公の希美を榮倉奈々さんがやったことは知っていました。
賀来賢人さんともこのドラマで知り合ったってことですかね?
榮倉さんにとって思い出の作品になっていると思うんですが、今回の朗読もその縁なんでしょうね。
しかし、本当に湊さんの Audible は豪華ですねー。

ドラマは見ていなかったので、前情報なしで読み始めました。
何というか、すごく不思議な話でした。
途中、ちょっとだけ『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンドレスエイトを見ているような気持ちになりました。

物語の冒頭は、それぞれの人が短いインタビューに答える形で、この『事件』がどういうものだったかを、それぞれの立場から少し話す感じでした。
それが終わってから、各登場人物の視点でまた物語が語られ出します。
5個ある章を一つずつ経るたびに、少しずつ新しい事実が明らかになっていきます。
同じ物語を見ているはずなのに、繰り返すたびに前とは少しずつ感じが変わっていくというのは、何だか奇妙な体験でした。
…そういう意味では、『エンドレスエイト』よりも『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』という感じでしょうか…?
ちょっと違うか。

一番最初、安藤は女の子だと思っていたんです。
そしてもう少し聞き始めると、ようやく安藤は女じゃないということに気づいてびっくりしましたけど。
男の子に「のぞみ」かー、新幹線が好きだったのかな?
主人公の希美は、何と言うか気さくな女性なんでしょうね。
周りの男性から、恋愛と感情『あり』でも『なし』でも、どちらでも憎からずと思われているという、人間的に魅力のある女性なんだなと思いました。
最後まで読み終えて、ようやく事件の全貌がつかめたら、なるほど『N のために』、「みんなが自分じゃない他の誰かのためにいろいろやっていた」ということがわかって、なんだかやりきれない気持ちになりました。
主要人物のほとんどが、それぞれ生い立ちに『虐待』とか『不倫』とか『暴力』とか、そういう負の部分を抱えていて、いろんな人がいるんだなーって。
普通の家で普通に育った私は、辛い現実はしんどいなぁと思ってしまいます。
みんながみんな事実を少しずつ誤解して、少しずつ自分の解釈で歪めていって、それが最後にはあんなことになってしまって。
みんな不幸になってしまったような気がします。
でも、結局その先で幸せになれてるといいなと思ういますけど…。
まか、野口夫妻と出会わなければ、少なくても若者4人は幸せでいられたかもしれないなと思うと、なんだか悲しい気持ちになりますけどね…。
特に野口夫人の奈央子はね…。
彼女が一番屈折していたな、と感じました。

この事件がなかったら、かけがえのない友人には会えなかったかもしれないですね。
でも、果たしてそれが良かったことなのかどうかは、誰にも判定できないんだと思いました。
いやー、難しいです。

ドラマ版は希美が榮倉奈々さん、安藤が賀来賢人さん。
成瀬が窪田正孝さんで、西崎が小出恵介さんかー…なるほど。
西崎の子供の頃が…若山耀人くんだったのね…。
そっかー、耀人くん、E テレの『未来広告ジャパン!』に出てて結構好きだったんですけどね…。
再放送は望めない感じでしょうか…。
あ、でも、Amazon プライムビデオでは貸出してるんですね。

自分の家庭が標準だとは言いませんが、せめて虐待などがない家庭でちゃんと子どもを育てなきゃな、と改めて思いました。
やっぱり、ずっとずっとのちまで引きずりますね…。
当たり前ですけどね、その世界で生きていくことを強いられてしまったわけですからね。
湊さんの小説はやっぱりヘビーだな、と思いました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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