横山秀夫さんの『64 上』を読みました。
横山さんの小説は、今まで『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『顔』なんかを読んだことがあります。
特に『クライマーズ・ハイ』は印象が深いです。
事故現場の凄惨さ、その事故の取材に行く記者のメンタルの状態なんかがありありと描かれていて、ショックを受けながら読みました。
今回読んだ『64』は、映画化されたときに見に行きました。
前後編の大作でしたねー。
前編をショッピングモールの映画館に観に行ったんですけど、終わった後に本屋の前を通ったとき、原作小説を買うか買わないかをものすごく悩んだ記憶があります。
「どうなるか知りたい、でも、映画で見たい」と葛藤した結果(5分くらい)、結局買わなかったんだよなー…。
後編は、めちゃくちゃ泣いた記憶があります。
というわけで、話の流れは知っている状態で読みました。
ただ、Wikipedia には「結末が原作とは異なる終わり方となっている」とありましたので、そのへんもちょっと気になります。
どれくらいのレベルで違うのか、ですよねー。
犯人が違うとかそもそも『誘拐』が起きなかったとか、そういうレベルではないと思いますが…。
それだと話変わっちゃいますからね。
細かい結末だと、覚えていない可能性が大です。
映画を見たときは『2つの誘拐事件』のインパクトが大きすぎて、それ以外のことはあまり覚えてなかったんだな、と思いました。
今読むと、それ以外のことがいろいろ起きていたんですね…。
もうなんだかいろんなことが起きすぎて、本当にごちゃごちゃしている感じです。
…悪い意味じゃなく、警察ってこういう感じなんだろうなというのが伝わってきます。
1つの業務に集中することなんかできず、常に何かが起きていて、上下関係のしがらみがものすごくストレスになって。
いつもそう思いますが、今回も改めて強くそう思いました。
上下関係のしがらみは、年齢はそこまで関係なくて、『ザ・階級』っていう感じ。
実力もあるかもしれませんが、『学歴』で完全に支配されていて、階級が違うと生物が違うとしか思えないような感じですね…。
そして、代々受け継がれていく『引継事項』。
今にも爆発しそうな爆弾を、自分のところで爆発させないように細心の注意を払いながら、次の人に回していく。
…いやー、本当に怖いですね…。
警察の広報という仕事も、とても大変ですね。
記者とやり合ったり、お互い持ちつ持たれつのときもあるけど、策略を巡らせて陥れたり陥れられたり。
…普通に穏やかに過ごしたい私には無理そうな仕事です。
記者同士も一枚岩なわけではなく、『記者クラブ』として団結することもあれば、その中でも「ついていけない」と感じている人もいたり。
まぁ、それぞれ違う会社の所属なんだから、当然といえば当然なんでしょうけど。
しかし、引きこもりになってしまった日吉さんですが、民間からこんなところに来たのであればそれは心も壊すだろうなあと思いました。
きっと、警察への転職は自分的にはすごくいい案だったんでしょうし、IT アレルギーが大きそうな警察組織にとっても日吉さんの存在はありがたかったんだろうと思いますが…。
いかんせん「世界が違いすぎる」というか。
それで結局、その先の十何年も人生を棒に振ってしまって。
転職前は、こんな未来は想像だにしていなかったでしょうね…。
しかも、家族に対してもどうしてそうなったかも言えず。
この先どうなるかもわからない。
…だって、NTT の研究所にいたってことは、かなりのエリートだったと思うんですよね。
それがもう、初めてで最大の挫折っていう感じだったんだろうなと思うと…本当に気の毒です。
あとは幸田さん。
こうやってずーっとずーっと監視され続けて。
それも『引継事項』の一つですからね。
いつまで続けるんですかね、幸田さんが亡くなるまでなんですかね。
普通に考えたら、人件費とか時間外手当とか…そういうこと言ってられないんでしょうが。
しかも、悪い人じゃないのにな…。
まぁ、たまにそういう『思想犯』的な感じで、ずっと公安から見張られてる人とか、小説で読見ますけど。
元警察官がそうなっているって知ってしまうと、ますます警察官のなり手が減っちゃうんじゃないかなって思ってしまいますね。
下巻も楽しみです。
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