横山秀夫さんの『震度0』を読みました。
横山さんの小説は『64 下』以来です。
『64』はとても重厚な物語でした。
思い出すとちょっと涙するくらいです。
その流れでこの『震度0』を読んだんですが…。
いやー…なんというかー…。
あ、違うんです、話はおもしろいんです。
けどなんというか…これが現実だったらすっごーーーく嫌だなー…って。
阪神淡路大震災が発生したその日、600km 離れた場所で、1人の警察官が昨晩から帰宅していないとの連絡が入りました。
失踪した警察官はその県のそこそこの役職だったため、『いろんな仕事』を担当していました。
彼が失踪したことによって、いろんな人がそれぞれの思惑で彼の行方を追い始めます。
保身だったり、出世のためだったり、不倫の秘匿のためだったり。
いろんな思惑が渦を巻きすぎていて…もう気持ち悪くなってしまいました。
何というか、読んでいて「これはゴタゴタのコメディ小説なんだろうか?」という思いが頭をもたげてきました…。
もちろん内容はおもしろいんです。
群像劇なのでいろんな人で視点が変わります。
中には「こいつ、こんなことまでしてたのか・させてたのか」みたいな人もいて、「なんでそんな展開になるの?」という驚きがあったり。
いろんな人からの伝言ゲームみたいになって、話に尾ひれがつきまくったりぜんぜん違う話になったり。
そういう展開はおもしろいんですが、これが『本当の話』だったらもう脱力するしかないな、と。
新聞どころか教科書にも載るような大震災。
その大震災の中、被災地から600km も離れているとはいえ、これは対岸の火事すぎるでしょう、と。
天下りとか保身とか、そんなことしか考えられないのかな。
人がいっぱい亡くなっていて、物語の時点でも2,500人くらいの方が亡くなってるっていう報告があったにも関わらず、一人の警察官がいなくなったことで自分の身に降りかかるこれからの災難ことしか考えられない人ばかりです。
そして、それぞれの配偶者の世界も夫の役職でヒエラルキーができていて、年齢関係なく『上』にゴマをすり、いい話を引き出し合い、腹の中を探り合い、懇談会を開催する。
…なんだかがっかりします。
結局、蓋を開けてみれば、『真相』はいなくなった警察官の個人的な感情で、「なるほどこういうことか」と納得はしました。
でも、それすらも最後の最後でごまかすのかと。
それでも、本当に一番最後で、「やっぱりそれは良くないんじゃないのか」という一部の人の良心が少し見えて…そこで終わり。
結局その後どうなったかは知る由もありませんが、あのまま有耶無耶にされるよりはよかったのかな、とは思います。
もちろん、我々一般人と接する機会が多い大部分の警察官の方たちは、本当に一生懸命、国のため国民の財産を守るために働いてくれているというのは理解しています。
ただ、『上に行く』というのはそういうことなのかな、とがっかりしてしてしまいます。
大きい組織ってこんな感じなのかな、と。
もちろんフィクションだとわかっていますし、わざとその悪い所を煮詰めたような物語で、内容をおもしろおかしく書くのが小説なんでしょうけど。
最初に書いたとおり、「本当だったらやだなー」と思ってしまいました。
もちろん、おもしろかったですけど!
コメント