震える天秤

読んだ本

染井為人さんの『震える天秤』を読みました。
染井さんの小説は『正義の申し子』以来です。

正義の申し子
染井為人さんの『正義の申し子』を読みました。染井さんの小説は『悪い夏』以来です。いやー、なんかすごい話でした。私の Kindle のサジェストの画面で、いつも『震える天秤』とともに並んで表示されていたんです。なので、勝手に「2つ合わせて、な...

前回読んだ『正義の申し子』は、ちょっとコメディーな要素があったように思いますが、今回読んだ『震える天秤』はかなり渋い内容でした。
序盤の状況説明だけ聞いていてもなんかいろんな想像ができてしまって、「どんな風に進んでいくんだろう」と怖くなってしまいました。
例えば中山七里さんの『ワルツを踊ろう』みたいに、ガッチガチの閉鎖社会の田舎なのかも? とも思いましたね…。
あとは、『変な家』に出てきそうな感じの洗脳された人っぽい話なのかな、なんて想像も巡らせてみました。

変な家
雨穴さんの『変な家』を読みました。雨穴さんの小説は初めてです。 先日映画化された小説で、書店のポップとかで盛んに宣伝していたので気になっていました。150万部の大ベストセラーだそうで、うきうきしながら読んだんですが。いや、もちろんおもしろか

何と言うか、結果的には結構ハートフルな内容だったというか…意外な着地点でちょっとびっくりしてしまいましたね。

高齢男性の運転する軽トラックがコンビニに突っ込んで、中にいた店長を轢き殺してしまうという事故。
紆余曲折を経て、その事故の『真相』にたどり着いた主人公のライター・俊藤さん。
結局、最後はああいう『判断』になったわけなんですが…まぁ賛否両論はあるでしょうけど、自分がもし同じ立場になったらと考えると、やはり主人公の俊藤さんと同じ行動をとるかな、とも思います。
もっともその点に関しては、元妻から結構ボロクソに近い感じで言われていたので、読んだ人の感想がみんながみんな同じとは限らないと思いますけど。
私も俊藤さんと同じように、同じような決断を下した後、同じようにたびたび思い出して、同じように罪悪感に苛まれる、みたいな日々を暮らしてしまいそうですねー…。
かと言って、全部ばらすのも違うと思っちゃいます。
それはそれで寝覚めも悪そうだしな、と。
難しいです。

少しずつ少しずつ薄皮をはいでいくような粘り強い取材で、ライターとかの職業の人たちは本当に大変だなと思いました。
昨今、マスコミとかオールドメディアが叩かれ気味ですし、実際に自分の身の回りにこういう人が現れたら嫌な気持ちになるとは思いますけど。
でも、職業意識とか粘り強さっていうのは本当に尊敬しますね。
以前読んだ『殺人犯はそこにいる』という、『北関東連続幼女誘拐殺人事件』を扱ったノンフィクションを思い出していました。
でも…最後は『あの判断』なんだもんなー。
結局は、俊藤さんの人情味の方が強かった、ということなんでしょうかね。

埜ヶ谷村の制度というか仕組みというか、それはそれは前時代的で、私なんかは耐えられないなと思ってしまいます。
でも、その中で今まで過ごしてきて、そこがすごく気に入っていて守りたいと思う人もいるんですもんね。
確かに『社会主義』『共産主義』っぽい感じではあるけど、その村はそうやってうまく回っているんですもんねー。
なんだか不思議な感じもしますが、実際そういうところってありそうだなとも思います。
私は絶対嫌だし「大人になったら逃げよう」と思って日々暮らしそうですけど、本人たちが嫌だと思わずに続けていきたいと願っているのであれば、その人達にとってはいい環境なんでしょうし。

今回の被害者だったコンビニの店長は、まぁ話が進むにつれてそのクズさっぷりがどんどん明らかになっていって…これは仕方ないなと思ってしまいます。
店長の父親も強烈だったし、金の亡者ですしねー。
あとは、俊藤さんが店長の母親に会いに行ったとき、彼女が包丁を持っていたのが怖かったです。
あのあと…やっぱり一悶着あったんでしょうかね…。
『無理心中』とかに、なっていいですけど…。

今回の加害者だった正三さんの優しさとか、村の人たちがそれぞれを思う気持ちとか、全体的なすごい結束感なんかはねー…。
都会暮らしに慣れてしまった自分には窮屈に感じますけど、一方でそれもちょっと羨ましい気もします。
実際、血の繋がりのない人に対しても「家族だろう」と言えるような『濃ゆい間柄』、すごいなぁと思いました。

主人公の俊藤さん、まぁ結局彼が自分に課せられた仕事を完全にまっとうすることはできなかったんですけど…それでも仕事を切られたり職を失ったりすることは多分なさそうな感じですかね。
多分、編集長も薄々気づいてるんじゃないのかなと思いました。
全部を全部暴くことが『正義』ではないのかもしれないですね。
…でも、結局『完全犯罪』みたいになっちゃうのかなと思うと、『警察好き』としてはちょっと複雑な気持ちになってしまいますけどね…。

Kindle Unlimited で読みました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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