贖罪

読んだ本

湊かなえさんの『贖罪』を読みました。
湊さんの小説は『未来』以来です。

未来
湊かなえさんの『未来』を読みました。湊さんの小説は『母性』以来です。 いやー、ヘビーでした。長かったし、途中ですごく苦しくて、読み続ける自信がなくなった時もありました。以前、井岡瞬さんの『代償』という小説を読んだ時もそういう気持ちになって、

前情報なしで読み始めたんですが、連作短編集でした。
メインの5つの話、最後に終章が1つ、全部で6つの話が入っていました。

1つ目は『フランス人形」。
今まで「成長しちゃいけない」って自分に言い聞かせてて生理が来ていなくて、『何か』をきっかけに初めて生理が来た、みたいな。
そういう感じの話、以前漫画か小説で読んだことがあるような気がして…。
何だったかなー? よくある題材なのかな?
『金田一少年の事件簿』の『金田一少年の決死行』、いわゆる『岩窟王』の事件。
あれも、狩屋くんは閉じ込められていた間はずっと小さいままで、結局逮捕されてから結構な速度で身長が伸びつつあるみたいな感じでした。
どちらもフィクションだからわからないけど、実際にそういうことってあるんですかね。
よく言われている『マリー・アントワネットが一晩で白髪に』も、実際に見てきたわけじゃないので…。
でも、人体って本当不思議ですから、あってもおかしくないかなとは思います。
小学校の時の、そういう紙一重で危機を免れた話っていうのは、きっとずっと引きずるんだろうなと思います。
以前読んだ宮部みゆきさんの『希望荘』に出てくる帽子屋の女性の話。

希望荘
宮部みゆきさんの『希望荘』を読みました。先日の『ペテロの葬列』の続刊です。 『杉村さん2.0』という感じで、新たな人生を歩みだした杉村さんの物語です。今多コンツェルンを辞めたので、『広報 あおぞら』の編集部や今多コンツェルン関係者なんかはほ

姉を自転車で会社に連れて行って、姉が会社で事件に巻き込まれてしまったという内容でした。
あれもずっと、あの人だけ引きずっていましたね…。
こういう事件は子供心にすごくダメージが大きくてかわいそうだなと思います。
今回の話の場合、一体どの時点から間違えたのかなと考えたんですが、これは手紙の形式でしたし、そもそも旦那さんを殺した後でこの手紙を書き始めたみたいな感じだったので、もう始まった時点で終わっちゃってたんだなっていう感じでしょうか。
最後に「小学生の時の『犯人』が、そこまでおじさんじゃなかったんじゃないか、30歳ぐらいだったかも」みたいな証言がありました。
あの年頃で30歳くらいの大人を見たら、確かに「おじさん」と思うでしょうねー。
警察はその辺のこと、理解してくれているんでしょうかね…。
人の年齢の感覚って本当に千差万別ですし、見た目と年齢がリンクしていない人もたくさんいますからね…。
犯人、見つかるといいですけど…。

2つ目は『PTA臨時総会』。
この話を読むまでは連作短編集だと気づきませんでした。
なるほど、その15年前に起きた小学校での児童殺害事件、これをキーにして、その時に立ち会っていた4人の女の子たちのその後を描いていく短編集、みたいな位置づけということですかね。
今回の学校の先生はよくやったと思うよー。
素晴らしいと思います。
子供を救ったんだよ、それなのにこんな風にやり玉にあげられて、みんなから責められちゃうんですね…。
恐ろしい。
確かに、もう1人いた先生がイケメンでしかも心を病んでしまったというのと、さらにその先生の交際相手の養護教諭があることないこと言いふらしたっていうのが、彼女にとってはとっても不幸でした。
でもそんな中でも精一杯頑張ったと思います。
人は幼い頃につけられたレッテル・スティグマで人生を左右させてしまうことっていうのは、少なからずあると思います。
彼女の場合は『しっかりしてる』って言うのが自分のアイデンティティになってしまっていて、「いつなんどきにおいても、そうでなければいけない」と自分で縛ってしまっていました。
さらに、自分のお母さんからはしっかりしていないことを責められ、エミリちゃんのお母さんからは「しっかりしていないと復讐しに行く」と言われてしまったから、きっと生きていくのがしんどかっただろうなと思います。
そんな中で、ナイフを持った自分の倍以上の体重のある不審者の男、それに対して立ち向かっていったというのは、本当に本当に素晴らしいことです。
それなのに、こうなっちゃうんだねー。
本当恐ろしい世の中だなと思いました。
自分の子供たちを助けていただいたにもかかわらず、厚顔無恥も甚だしいです。
どうか、いい弁護士がついて、ちゃんと彼女の味方になってもらって、無罪を勝ち取れればいいなと思います。
でも、最後にその PTA 臨時総会で言いたいこと言えてよかったなと思います。
『未来』の先生も、これくらい言っちゃってよかったのにな、って思いますけど。

未来
湊かなえさんの『未来』を読みました。湊さんの小説は『母性』以来です。 いやー、ヘビーでした。長かったし、途中ですごく苦しくて、読み続ける自信がなくなった時もありました。以前、井岡瞬さんの『代償』という小説を読んだ時もそういう気持ちになって、

これからは幸せになってほしいです。

3つ目は『くまの兄妹』。
そうかー、彼女も犯罪者になってしまいましたね…。
何と言うか、こういう感じで引きこもりになっちゃう子もいるだろうな、と思っていましたけど、まさにそういう感じでした。
そして、現実と想像の区別がつかなくなっていて、自分で兄ちゃんを殺したのを分かってないのかな…?
結局、今話を聞いていた『カウンセラー』という人は、エミリちゃんのお母さんてことですかね。
また児童虐待・性的暴行。
こんなんばっかし。
大人って汚いですね…。
でも彼女の場合、エミリちゃんとは実はちょっと仲良くなりかけだったというのがわかって、そこはおもしろいなと思いました。
前の章の『PTA臨時総会』でもそうでしたが、いろんな人の視点から見ると、少しずつ見えないところが見えてたりとかして、新しい形になっていくっていきますね。
ここに来てようやく容疑者っぽい人が現れた感じです。
時効まであと数日みたいだけど、解決することになるんでしょうか?
今は殺人事件の時効はなくなりましたが、これはやっぱりそれより前ですよね。
やっぱり殺人事件は時効をなくした方がいいですね…。
警察側は大変かもしれませんが。

4つ目は『とつきとおか』。
結局、最後の一人も人殺しになってしまいました。
やっぱり子供の頃に大人から言われたきつい言葉っていうのは、子供の心の中にくっきりと残っていてずっと引きずるんだなぁと思いました。
『ミステリと言う勿れ』でも出てきた『セメントに物を落とされる』という現象なんでしょうね。
この人に関しては、ちょっと生い立ちはかわいそうだと思うけど、姉の旦那に手出してるしね…。
しかし、姉がちょっと狡猾すぎて、すっごく嫌な感じです。
確かにこの姉だとかわいそうだなとは思いました。
いろいろ弱みも握られちゃってたしね。
結局、エミリちゃんのお母さんは、この事件についてなにか証言したりするんでしょうかね?
今頃になって、こうやって会いに歩いて回ってるっていうことは、潜在的にかもしれないけど、自分のせいだっていう自覚があるということなんでしょうか。 

5つ目は『償い』。
なるほどなー。
エミリちゃんのお母さんも『いろいろあった人』だったというわけですね。
…まぁ、もちろん何もない人なんていないでしょうけどね。
元々がお嬢様気質であったのは、まぁその通りなんだろうなと思いましたし、自分以外の周りの空気を読むことができなかったんだろうな、ということも想像できますね。
だからこそ、心に思う相手がいる人を略奪するような形になってしまったんでしょうね…。
まぁ本人が言ってた通り、自分以外に好きな人がいて、それを知っていたのであれば、あえてそこに行くっていうことはなかったでしょうねー。
プライドも許さないでしょうし。
本当に、ほんの少しのボタンの掛け違いだったんだろうなと思ってしまいます。
でも、それによって友人をなくし、恋人の職も奪われ、か…。
結構業が深いですね。
そして結局、自分の娘を殺したのは娘の父親。
しかも性的暴行。
それを知ったその男は、どう感じるんでしょうか?
本当、まさに業が深い。
まぁ当然ですけど、エミリちゃんが一番本当にかわいそうです。
そしてその次は、そんな現場に立ち会うことになってしまったこの友人たち。
大人に関しては、本人たちが悪いです。
子供を傷つけるようなことはやめてほしいですね。
…エミリちゃんのお母さんは、本当に何とも思ってなかったんでしょうね。
自分が子供達に対して呪いをかけたということに対して、すぐそんなこと忘れただろう、と。
少しでも娘のことを覚えていてくれればそれでいいって、本当に軽い気持ちで呪詛をつぶやいただけなんでしょうね。
それが、それぞれの子供の心の中で大きく大きく熟成してしまって、結果こういうことになってしまいました。
…ひょっとして、エミリちゃんのお母さんが仕組んだんじゃないかと思っちゃいましたが、さすがにそれは考えすぎで。
まぁある意味全部運が悪かったんでしょうか。
あの日植えた種が育って、こんな風になってしまったというか。
なんだか切ないです。 

そして最後、『終章』。
『PTA臨時総会』の真紀先生は、結局執行猶予付きの判決になったみたいです。
本当に良かったと思います。
『無罪』だと、ひょっとして本人的にもしこりが残ってしまうかもしれないですからね。
あとは『とつきとおか』の由佳と二人で学校を訪れて、今度廃校になるその学校でエミリちゃんの冥福を祈る、という短い内容でした。
もちろんすべてがスッキリしたわけではないです。
残りの2人はまだ裁判が長引いてるみたいだし。
でも良かったと思います。
15年かけて呪いが解けて、「みんな幸せ」とは言えないかもしれないけど、これからは『自分で描いた人生』を全うできるといいなと思います。
…何のための15年だったんでしょうね。
せっかく大人になれたのに、こんなつらい結末に進むしかなかったのかな、って。
エミリちゃんは将来を奪われたというのに。
しかも父親の手で。
彼女たちも言っていましたけど、「全部エミリちゃんのお母さんのせいじゃん」て感じです。
なんだかねー。
いわゆる『親の因果が子に報い』っていうやつなんでしょうか。
エミリちゃんからしてみれば、たまったもんじゃないですよね。
ちょっと勝ち気だけど、すごくいい子だったのに。

今回の朗読は小池栄子さんでした。
いやー、小池さんもとても素敵な朗読でした!
以前、この本はドラマ化されていたようで、そのときに小池さんは『PTA 臨時総会』の真紀先生だったそうです。
なるほどなー! いいキャストですねー!
エミリちゃんのお母さんは小泉今日子さんだったそうです。
こんな美人にセメントにものを落とされたら、忘れたくても忘れられなくなりそうですね…。
湊かなえさんっぽい『イヤミス』っぽい感じの話でしたが、本当におもしろかったです。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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