翔田寛さんの『知能犯』を読みました。
翔田さんの小説は『黙秘犯』以来です。
『船橋署刑事課・香山亮介シリーズ』の第4作目なので、以前読んだ『時効犯』の次の作品です。
桟橋に佇む人影の表紙。これは誰なんでしょうね? 今回殺害された近藤は、学生時代は相撲部で体も大きかったため違うと思いますし、彼を刺した殿山も小柄な人物とのこと。ということは、やはり今回呼び出された小田嶋、ということですかね。
『知能犯』というタイトルから、なんか詐欺でもやったのかなと思いましたが、違いました。読み終えた後、「あぁ、知能犯だな…」と思いました。あとちょっとがんばって(?)いれば、『完全犯罪』になったかもしれないのに…とも思いました。まぁ、そんなことになられたらダメですけどね。
今回香山さんが挑んだのは、テレビでもちょっとした人気となっている美容師の小田嶋。はじめはちょっとした『事情聴取』の体で呼び出しましたが、その時からすでに彼を追い詰めることだけを考えていたんでしょうねー。
前作までは追い詰めて追い詰めて、最後に取調室で落とすという感じでしたが、今回はちょっと違いました。取調室の場面と、刑事たちが靴底を減らして捜査をしている場面が交互に描かれていて、不思議な臨場感がありました。
にしても、この小田嶋の執念は凄まじいですね…。ターゲットのことをストーキングして、そしてようやく見つけた『当たり』においしい餌をやって育てていって、ついには思い通りに操ってしまった。小田嶋にもうちょっと堪え性があったら、本当に完全犯罪になってしまっていたかもしれません。
ある意味『運』も彼に結構味方していましたよね…。どれくらいストーキングしていたかは知りませんが、決定的な場面を捉えることに成功していますし、殿山は現行犯で捕まったパトカーの中で死んでしまうし。まぁ、その日近くでコンビニ立てこもりさえなければ、足取りを掴まれなかったかもしれない。あとは、体質が災いしたかな…。まぁ、五分五分か…?
小田嶋の生き方は…要領がいいというか、刹那主義というか。息するように嘘を付くタイプだったんですかね? 美容師として人気があったときに、客との会話の流れに応じて子持ちになったりバツイチになったりしていたとのことですが、その後タレントとしてテレビに出るようになってしまってから、流れでついた嘘で首を絞められるような自体にはならなかったのかな? と思います。勝間和代さんも「嘘をつくと、どんな人にどんな嘘をついたかを覚えていなくてはいけなくなり、コストが掛かって重荷になるからやめたほうがいい」と仰っていました(ここで出すようなたとえじゃないかも知れませんが(笑))。彼もそんな刹那的な生き方やめればよかったのにねぇ…。ここまで人心掌握に長けていて、口も達者で容姿も端麗なんだから、もうちょっとだけ誠実に生きていればいい人生を送れただろうに。もったいないなぁ。
エピローグでは、増岡ちゃんがお見合いをやめてしまいました。ありゃりゃ。もちろん、結婚だけが幸せではないですからいいんですけどね。ちょうどこの間『ミステリと言う勿れ』を読み返していて、整くんが風呂光さんにそんな事を言っていたなぁ、と。まぁ、香山さんのような上司がいたら、そういう刑事になりたいと思っちゃうんだろうなぁ。
あれ、やっぱり香山さんと増岡ちゃんがくっつく未来、あったりします? …なんて考えるところが、オバサンなんだろうなぁ…。
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