恒川光太郎さんの『滅びの園』を読みました。
恒川さんの小説は初めてです。
ゲーム『NieR Replicant』を思い出すような話でした。
一人のためにすべてを滅ぼすか?
どちらを守るのか?
解説でトロッコ問題に例えられていましたが、そういうことなんだろうなと思いました。
多数が救われるのであれば、一人の幸せはなくなってしまってもいいのか。
わからないです。
でも、『地球規模 vs 一人』だったら、一人の方が屈さざるを得ないんでしょうね…。
渦中の人物・鈴上はなぜ、捕らえられるような状態で空の彼方で生かされていたんですかね…。
プーニーの『親玉』は、鈴上をどうしたかったんでしょうか?
彼にはなにかプーニー側にとっての特殊な能力があったから取り込みたかった?
ただ単に、なにかのサンプルのために人間一人をさらいたかった?
幸せな幻は、彼を逃さないために罠だったと思うのですが…。
鈴上はその『策略』にハマって、彼を助けに来る人たちを次々排除していきますからね…。
なぜ鈴上が地球に帰還できたのか、不明でした。
『突入者』たちは全員死亡してしまったのに。
運が良かったのか、プーニーの助けなのか。
また、帰ってきてからの鈴上も、語弊を恐れずに言えば「期待通りの振る舞いで、よかった」ですね…。
案の定、という感じの傍若無人さ。
いかにもな感じで、周りは振り回されて混乱させられて。
そして、最期はあっけなく。
私は結構、この鈴上の最期が気に入っています。
やっぱり『デスノート』の夜神月じゃないけど、暴君はあっけなく散るのが好きです。
ドラマチックな最後なんて、送らせてあげないでほしい。
まぁ、『映え』はしないかもしれませんけどね。
鈴上はヘイトを集めすぎたんですね。
復讐されるしかなかったんだと思いました。
鈴上だけでなく、地球でプーニーを操ったり排除したりして、精一杯生きている人達の人生も描かれていました。
東日本大震災や新型コロナウィルス流行のような、『個の力ではどうすることもできない事象』という感じに受け止めました。
結局、その時代に起きた特殊な事象によって、運命をガラッと変えられてしまった人っていうのは少なからず存在してしまいますね…。
聖子ちゃんは児島と結婚してほしかったよ。
でも最後は39歳になっていて、プーニーの排除に人生を費やしてしまって。
なんだか「人生ってなんだろう」って思ってしまいます。
理剣くんは、転送時に本性を剥き出しにしたところがよかった。
願わくば、舞さんと幸せに暮らしてほしかったですけど。
プーニーがいなくなった世界で、これからどうやって生きていくのか。
長い時間をかけて、自分たちの半生をプーニーに捧げる形になってしまった人たちは、プーニーがいなくなった世界でこれからどうやって生きていくのか。
それを、ちょっと見たかったような気もします。
自分の想像で補完するしかないですね。
それもまた楽しそうですけど。
Kindle Unlimited で読みました。
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