未来

読んだ本

湊かなえさんの『未来』を読みました。
湊さんの小説は『母性』以来です。

母性
湊かなえさんの『母性』を読みました。湊さんの小説は『リバース』以来です。 いやー、なんというか…気持ちの悪い話でした。まず「アイアタウカギリ」が意味がわからなくて。こういうとき、Audible はやっぱり漢字で見られないのは不便だなぁ、と思

いやー、ヘビーでした。
長かったし、途中ですごく苦しくて、読み続ける自信がなくなった時もありました。
以前、井岡瞬さんの『代償』という小説を読んだ時もそういう気持ちになって、本当に辛かったんですよね…。
私にとっては、日常生活に支障が出るレベル。
今回も途中で「読むのやめよう」何度も思いました。
でも、今は読み終えて本当に良かったと思っています。

特にしんどかったところが2ヶ所ありました。
『使用済みナプキンのいじめ』のところと、先生の『ビデオ撮影』のところです。
そこは本当きつかったな…。
ちょっと立てなくなるぐらいでした。
まず使用済みの方、実里は物語の中でもう言われてたけど、『病気』でしょうね…。
それか、その頃もうすでに家庭の中がしっちゃかめっちゃかだったとか。
それぐらいじゃないと、こんなことやらないよ…。
自分だって毎月出すもので、自分から出たものであっても正直不快感があるのに。
それを、いじめの材料に使うなんて…『超えちゃいけない一線』って感じで、頭おかしいとしか言えないですね…。
先生のビデオの件、こっちもきつかったです。
『撮影のシーン』がきつかったですね…。
けど、内容的に『AV』ではなく『エロ多めのイメージビデオ』って感じだったってことでしょうか?
もちろん保護者から「だから何なんだ」って言われたらそれまでですけどね。
原田くんからの言葉もきつかったです。
『好きな人』の言葉だから、心をえぐられました。
でも、結局先生は原田くんと一緒になれたってことなんですよね?
もちろん、学校の先生という職業をやめることになったのは本当にかわいそうなことではあるけど、免許を剥奪されたわけじゃないんだから、新しい場所に行って新しくやり直しすっていうのもありですよね。
かなり大胆にイメージチェンジしておくとか。
大事にしてくれる人がそばにいるのであれば、乗り越えられるかもしれないです。
にしてもなー、吊し上げの会もしんどかったでしょうね。
私だったら「それ、どこでご覧になったんでしょうね? いかがわしい場所でしか見られないはずなんですけど、奥様と一緒だったんですか?」くらい言っちゃいそうですけど…。
まー、それも想像の中でしかできないですけど…。

この物語では、4人の人物がキーとなっていました。
章子と亜里沙と先生、それからパパ。
それぞれがそれぞれに心の闇というか傷というか、大きいものを抱えていました。
まぁ、その中でも、先生に関しては前述の通りちょっと救われたかな、っていう気持ちはありました。
他の3人はなあ…。
パパは結局がんで亡くなってしまいました。
先生と最後に密談みたいなことをして、『未来』を託していました。
先生も、それをある意味心の拠り所としていけそうな感じだったので、この2人に関してはまぁよかったなと思えました。
大人ですしね。

大人章子からの手紙と亜里沙への手紙の種明かし、考えてみたら「なるほどな」っていう感じではありました。
でもそれは、小学生にとっては十分不思議で素敵なことだったし、その手紙が2人にとってずっとずっと心の支えになっていたであろうことは想像できます。
「過去への手紙は何回もは書けない」みたいな言い回しのところとかも、子供心をくすぐられるようでなんだかワクワクしますね。
でも、その『子供』であるはずの章子と亜里沙は、こんなにしんどい環境で生活しなければいけなかったんですね…。
はじめ、章子のお母さん・文乃は「正直、母親になっちゃいけない人でしょ」って思っていたんですけど、パパの章を読んで「なるほど、こういう生い立ちか…」と。
本当に不幸だったんだなと思ってしまいました。
そして、その『不幸属性』のせいで、一部の男性から熱烈な支持を得るタイプの女性ですね…。
林先生に対しては冷たかったのに、どうして早坂は受け入れるようなそぶりを見せたのかというのも、なるほど兄を投影してたのか、と納得できました。
『早坂は顔がいい』って書いてあったもんなー…。
結局、レストランに火をつけたのはお母さんだったのかな。
そして最後、亜里沙のお父さんと早坂はどうなったんでしょうね…。
文乃が今度も全部引き受けてしまったんでしょうか。
本当不幸な人だなと思います。
まぁ、そもそも自分の父親から性的虐待…いうか強姦、その時点で不幸のどん底であることは間違いないですね…。
彼女のお母さんは自殺したんでしたっけ?
それも無責任だなと思ってしまいます。
もちろん彼女も被害者ですけど、親として気付いてたんだったら助けてあげなさいよ…。
でも、環境的にそういうのも難しいんですかね。
妙に『母親の前に女である』みたいな人な感じがしましたから。
文乃の兄に関しても、もちろん妹に対してやってたことはひどいことだけど、彼も被害者・犠牲者だと思うとつらいです。
心を殺していないと生活できない場所だったんでしょうね。
普通に暮らしてたら、きっと普通に素敵な人になってたんだろうし、パパとも強い友情で結ばれて、『自分の妹を親友に託す』みたいな、そういう間柄になれていただろうに。
やっぱり結局、大人がひどいと歪みが子供に行ってしまいますね。
なんだかそんな話ばっかりで、つらくなります。

一番最後のシーンで、ドリームランドの入り口早朝を列に並んでいるところがありました。
ここから声をあげて助けを呼ぶって。
私も、1回だけだけどディズニーシーの開園前に並んだことがありました。
あの独特の『静かな熱狂』という感じの雰囲気で、急に中学生ぐらいの子が2人なんか声を上げて「助けて」みたいなことを言い始めたら、周りがどんな反応するのかな…と。
そこで並んでいる人たちは、みんなもう楽しみで楽しみで仕方ないっていう感じの人たちばっかりですから、「助けて」と叫ぶ子供たちをちゃんとケアしてあげられるかどうかは…未知数ですね。
親切な人が従業員とか警察を呼んであげて、そこからちゃんと保護してもらえればいいんですけど。
あとは亜里沙の弟、かわいそうでしたね…。
ドリームランド、せめて一緒に行けたら良かったんですけどね。
『変な家2』の時もそうでしたけど、男の子だからって安心できないですね。

変な家2 ~11の間取り図~
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本当に大人が悪い、そうとしか言えないです。

この本は湊かなえさんの作家10周年記念だったそうです。
今まで読んだ中では『告白』が一番好きだったんですけど、この『未来』も本当におもしろかったです。

告白
湊かなえさんの『告白』を読みました。 この『告白』は、発売されたときに一度読みました。おもしろかったですねー。続々しながら読んだのを覚えています。でも…もう15年以上前なので、正直あまり覚えていなくて…。なので、今回 Audible で読め

『告白』の方が、正直スカッとすると思っちゃう感じなんですが、こちらの『未来』はそれこそ未来があるなってちょっとだけ思えるというか。

今回の朗読は、女優ののんさんでした。
この話はまだ映像化とかはされていないのかな?
どういうつながりでのんさんが朗読されたのかはわかりませんでしたが、いやー本当に上手で驚きました。
天真爛漫なイメージののんさんですが、シリアスな声はドキッとしますし、それこそ途中でやめたくなるくらい『いじめ』のあたりは迫力がありました。
本当に才能あふれる人なんだなぁとつくづく思いました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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