有罪、とAIは告げた

読んだ本

中山七里さんの『有罪、とAIは告げた』を読みました。
中山さんの小説は『さよならドビュッシー』以来です。

さよならドビュッシー
中山七里さんの『さよならドビュッシー』を読みました。中山さんの小説は『ラスプーチンの庭』以来です。 ようやく読めた中山さんのデビュー作。音楽関係の仕事してたの? というくらい、演奏シーンとかは迫力がありました。音の表現もすごく染み込んでくる

こういうタイトルの新刊が出る、という知識しかない状態で読んだので、『静おばあちゃんにおまかせ』の円(まどか)ちゃんが主人公だというのは嬉しい驚きでした。
今でも葛城刑事とはお付き合いしているみたいで、ちょっと安心しました。
ただ、この話の中ではまったく進展していないですし、二人にこの先があるのかどうかはわかりませんが…。
『法医学教室の事件ファイル』みたいに、刑事と法医学者の組み合わせもいろいろ大変そうですけど、円ちゃんと葛城刑事のような裁判官との組み合わせも仕事やりにくそうだなぁ…と思ってしまいます。
担当が違えば大丈夫なのかな。

中国が開発した AI が、裁判の資料集めから判決まで代行するという触れ込みで導入されました。
まー、円ちゃんは結構懐疑的な感じ。
新しいシステムが導入される時ってそういうもんなんだと思いますけどね。
静おばあちゃんも本文の中で言っていましたが「100% みんなが信じるものは疑ってかかりなさい」というのは確かにそうだなとは思いました。
…マスコミのゴリ押しの報道とかもねー。

裁判長が尊属殺人に重めの判決を下すクセがあるのに加えて、仮導入の AI には中国の常識に当てはめて尊属殺人自体を重めに判定するというロジックがあったがために、二重に判決重く出てしまい、それが原因で結局導入は見送られてしまいました。
…これがもし、その変なロジックが入ってなかったら、導入されちゃってたのかな…。
あと、裁判長が AI 導入に結構乗り気だったのは、ただ単に「自分の考えがコピーされて、もう一人の自分ができる」という利点だけ、だったんだよね…? って、ちょっと勘ぐっちゃいますね…。
昨今都市伝説的に言われている、中国にいい接待してもらった親中派の人なんじゃないかな、みたいな感じを持ってしまいます。
ちょっと穿ちすぎかな…。
彼のモノローグで「もうちょっと上に出世できそう」みたいな感じだったので、功名心だけだと信じたいですけど。

結局、一番最後に葛城刑事のお友達のソフトウェア開発者が、「資料集めとかに特化したAI のシステムだったら作れます」みたいなことを提案してくれました。
まー、それを採用するのが一番いいんでしょうねー。
やっぱり、国の裁判とか、国の根幹に関わるような問題については、国産のソフトウェアを使ってほしい気がします。
開発者が外国にかぶれている可能性もあるので、それを追求していったら作れなくなっちゃいますけどね…。
で、資料集めみたいに代行してもらえそうな業務であればどんどん AI に任せていって、時給の高そうな人たちはそういう単純作業的な分野からは撤退していただいた方がいいんでしょうね。

円ちゃんは念願の裁判官になれたみたいですが、なんかちゃんとやっていけるんですかね…?
海千山千みたいな人達がいっぱいいそうなところで。
なんだか心配になっちゃいましたよ…。

あ、今回は『中国産のソフトウェア』ということで、その部分の反感もちょっとありつつのこういう結末になったのかな、と思ってしまいますが、判決文を試しに AI に出させてみてそれを検討していくというアプローチでも、もう時代的にはいいんじゃないかなと思います。
今回は、「事件の方で見逃されていた新事実があとから発掘されたから、AI なんかでは判定できない」みたいな感じに受け取ってしまったけど、それは別にAI うんぬんは関係ないような気もしますし。
結審の日までに新しい事実が出てこなかったら、結局はそうなっていたんだろうしなーって。
なんかちょっと、論点のすり替えっぽいなと思わなくもなかったです。
まぁ、私が未熟なせいでそんな解釈になってしまったんだと思うんですけど…。
ただ、なるほど犯人が逃げ回ったのは、こういう意味だったんだなぁと思いました。

そんな遠くない未来に起こり得るかもしれない事態を、時代のニーズに合わせて素早くエンターテイメントに作り上げる中山七里さん。
本当に、いつもすごいなと思います。
今回もおもしろかったです。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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