方舟

読んだ本

夕木春央さんの『方舟』を読みました。
夕木さんの小説は初めてです。

この『方舟』も、先日の『爆弾』と同じく、書店でよく見ましたし、ポスターもよく見ましたねー。


どんな話なのかはまったく知らずに読み始めましたが、いやー、本当にすごい話でした…。
もう、読んでる途中からずっと心臓がバックンバックン言っていましたし、とっても息苦しかったです。
実際、小説の中で登場人物たちが、酸欠みたいな状態になっているシーンこそなかったですが…そのうち…ねぇ…。

しかし、やっぱり「自分が生き残りたい」という想いが強い人が、やっぱり最後には生き残るのかな…なんてそんな感想を抱いてしまいます。
私なんかは「もういいやー」って思っちゃいそうで…。
すごく昔に『バトル・ロワイアル』を読んだときも、そう思いましたね…。
まぁ、こんなシチュエーションになったことがないからわからないです。
できればこの先も、ずっとこんなシチュエーションにはならないでほしいですけど…。
でも、仮に生き残って脱出できたとして、この先『平穏』に暮らしていくのはちょっと無理かなって思ってしまいます。
この発生状況からして、社会的・マスコミ的に、そもそもこんな『事件』がなかったかのように振る舞うことは可能でしょうけど、自分のメンタル的にね…。
自分が死ぬまで一生『残りの人たち』のことを思い出しながら生きていくのは、私には無理なような気がします。
いやー、本当にしんどい話でした。

話の流れ的に、ひょっとしたら一番最初に殺された男性が一番幸せだったかもしれないな、なんて思ってしまいますね。
その後のことや、『解決編』や、最後の絶望を味わわないで済んだんですからね…。

『地下』というシチュエーション的に、読んでいる間中ずっと息苦しかったです。
似たようなシチュエーションとして思い出したのは、以前読んだ『アリアドネの声』。

この話は、主人公視点の人物たちは地下にはいませんでしたが、ずっと地下にいる人物を地上へ誘導するためにありとあらゆる手を使っていました。
これも、読んでいる間中息苦しかったですね。
あとは、『約束のネバーランド』の農園から抜け出した後に行った『ミネルヴァの地下シェルター』ですかね…。
あそこはいろんな意味できつい場所でした。

2番目の被害者の殺害理由と殺害方法…というか遺棄…というかの理由がキチガイじみてるな、と。
そんな理由でそんなことしちゃうの…? と。
何となく、『犯人』の真の姿というか、そのメンタリティみたいなものが一番あらわれているんじゃないかな、と思いました。
だって、ねぇ、いくらなんでも、そんなこと、しますか…?

そして最後の最後、エピローグがすごかったです。
探偵役の推理は大筋であっていたんですが、最後に『電話』で「動機はまったく違う」と言われて。
それから『犯人』の口から語られた動機は、ものすごい衝撃でした。
それを電話で伝えるところ、さらに主人公の行動いかんでは主人公も助かる可能性があったというところ。
…絶望でしょうね…。
まぁ、これだけいろんな可能性を考えている犯人ですから、凡人っぽい主人公を連れて生還する気は、あまりなかったかも知れないですけど。
願わくは、その後主人公たちがそんなに苦しまずに…。

うん、やっぱり何回考えても、自分1人だけで抜け出すという選択肢は私にはないし、そもそもダイビングとかやったことないですからそういうこともできないですね。
想像するだけで本当に息苦しくなります。
『金田一少年の事件簿』の『悲恋湖伝説殺人事件』の一番最後で、美雪が「『カルネアデスの板』のようなシチュエーションになったらどうする?」と金田一くんに問いかけたときに、すぐ「2人とも生き残る方法を考える」と答える印象的なシーンがあるんですけど、金田一くんがこういうシチュエーションに迷い込んでしまったら、どういう答えを出すのかというのは、すごく興味があります。

解説はまさかの有栖川有栖先生でした。
やっぱり、ぎゅっとまとまって見事な解説でした!
より内容が濃くなったなという印象です。
確かにもう1周した方がよりわかるかもしれないな、とは思うんですけど…、ちょっと今はその元気がない…。
もうちょっとしたら、そのうちね…。
この小説を2周ぶっ続けで読める元気はないです…。
その解説にも書いてあったんですが、「自分がこのシチュエーションになったらどうするか?」というのは多分誰しも考えますよね…。
まぁ、先程からすでに散々書いていますが。
私は多分、生きることを諦めるだろうなと思ってしまいます。
まー、その場にうちの子供達が同行していたら、また違う行動に出るような気もしますが…、正直それは考えたくないですね…。
登場人物内にも親子がいたので、そこもまた心が苦しかったです。
というか、その前に多分、『この施設の中に入らない』んじゃないかな…なんて。
なぜかといいますと、私は軽い『閉所恐怖症』の気があるんですよね…。
真冬で暖房点けてても窓を細く開けてますし、こもっているのが嫌なんですよね。
あ、引きこもっているのは好きなんですが。
なので、そもそもそんな施設に入らないんじゃないかな…。
「あ、すみません、私帰ります」って普通に言いそう…。
まー、もしくは、閉じ込められた時点で発狂してしまうような気もしますね。
…案外、その方が幸せかもしれないですよね…。

本当に本当におもしろかったですし、読んで良かったなとは思います。
でも、再読はもうちょっと先。
これを読んだ日は寝られなくてびっくりしました。
樺沢先生がよく「寝る直前に興奮系の娯楽をしないように」とおっしゃっていますが、本当だなとつくづく思いました。
ずっと心臓バクバクしてて、全然寝付けませんでしたので。
読む際はお気をつけください、って私だけかな。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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