悪い夏

読んだ本

染井為人さんの『悪い夏』を読みました。
染井さんの小説は『芸能界』以来です。

芸能界
染井為人さんの『芸能界』を読みました。染井さんの小説は、以前『正体』を読みました。横浜流星さん主演で映画をやっていましたが、私が読んだときは WOWOW で亀梨くんが主演のドラマを放送するタイミングでした。読んでボロッボロに泣きました。一番...

この小説、現在公開中の映画『悪い夏』の原作です。
そのこともあり、読んでみようと思いました。

映画の紹介文では『クズとワルしかでてこない』と書いてありましたが…。
いやこれは、なんというか、すごい話だなと思ってしまいました。
というか、主人公の守くんは悪い人じゃないじゃん…。
騙されちゃった人じゃん…。
すごくかわいそうな人でした。

私は常々、「犯罪を犯すも犯さないも紙一重だな」と思っていたんですが、今回もまさにそういう感じでした。
守くんは、騙されて結局薬中にさせられて、あれあれよという間に転落していってしまいます。
最後には『逆の立場』になってしまいました。
それこそ『あとがき』にも書いてあったんですが、『悲劇なのが喜劇なのかわからない』ような感じで終わってしまったのが、なんだか笑えてくるし、悲しくて泣けてきました。

まず、そもそも同僚の宮田ですが「こいつ絶対やべぇやつだな」と思っていましたけど。
やっぱりそういうことか、と後半ですっきりしました。
「多分『そう』じゃないかな~」と思ってたんですが、そうでしたねー(笑)。

愛美の『すべてに対して無気力な感じ』も、じゃぁ一体誰が悪いんだろうという気持ちになります。
彼女はもちろん悪いだろうと思います。
同じような状況で生まれてきた人でも、ちゃんと真っ当に生きている人はたくさんいると思うので。
そういう意味では、すべてを環境だけのせいにしてほしくないな、とは思いますけど…。
でも、それこそ自分の親から受け継いでしまって、結局抜け出せないで…って、それはやっぱr被害者なんだろうな、と思います。
でも、それこそ全員が全員そうなるわけじゃないからなー…。

『生活保護』というテーマです。
今のところ自分はお世話になる予定はなく、それはすごく幸せなことだなとも思っています。
でも、なんか難しいなと思います。
私の母は、以前個人経営の病院(診療所)で派遣の医療事務をやっていました。
手が少し開いていたら、病院の受付もやっていたみたいです。
ちょっと詳細は忘れたんですが、出される保険証か何かで、「その人が生活保護を受けている」というのが分かると言っていました。
でも、駐車場のその人が乗ってきた車を見ると、ベンツだったりするみたいなんですよね…。
「どういうことなんだろうね」って笑いながら話していたのを、何回か聞いたことがありました。
派遣の医療事務なので、家の近くの診療所なんかではないため、「誰なのか」という個人情報はまったくわからないし知りたいとも思わないんですけど、たしかに当時は不思議に思っていました。
でもまぁ、要するにそういうことなんでしょうねー…。
私は学生時代を宮城県で過ごしていたんですが、宮城みたいな中途半端な田舎でもそんな状態なんですから、そういう状況はきっと全国にたくさんあるんだろうなーと思います。
まぁ、その1つ1つに私が目くじらを立てるようなことじゃないので、別にいいっちゃいいんですけどね。
でもまぁ…私も一応税金払っていますし、悲しい気持ちにはなるかな。
あと、この小説を読んで、「本当にどうしても働きたくないっていう人もいるんだなー」と思いました。

まぁ、いろいろ『やべーやつ』がたくさん出てきました。
山田については「もうちょっと頑張れよ」って思いますが、ある意味この中だとかなりまともな方だったんだなという感じでしょうか。
金本もやべーし莉華もやばい。
本当に、やばいやつばっかりです。
だからといって、やっぱり守くんをそっち側に落とさないで欲しかったな、とは思いますね…。
かわいそうです…。
もうちょっと、どこかで何とかならなかったかな、っていろいろ考えちゃいますね…。
バイアグラと騙されて MDMA をやったあたり、覚醒剤を打つ前に、警察なんかに行けていれば…なんとかなんとかもしれないですかね…。
悲しいです。

結局、一番最後で無事がわかっているのは守くんと美空ちゃんだけですかね。
まぁ、守くんが『無事』なのかは疑問が残りますが…。
他の人たちはどうなったんでしょうか…?
最後に聞こえてきた社会福祉事務所の人間の声は…『現実』なんでしょうか?
それとも…。
守くんは今、どこにいるんでしょうか?
自宅なのか、それとも…。
いやなんかもう、いろんな余地がありすぎて、想像するのが怖いラストでした。
まぁ、要するに秀逸だったということでしょうか。

これ…、映画どうしよう…。
なんか怖くて見に行けないような気がするんですよね…悩ましいです。
でも、なんか「小説と違って救いがある」っていうのを小耳に挟んだんですが、本当ですか?

Kindle Unlimited で読みました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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