稲葉圭昭さんの『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』を読みました。
稲葉さんの本は初めてです。
先日、Switch で『リーガルダンジョン』というゲームをプレイしました。

主人公の警察官として、起こった事件の書類を作成し、被疑者たちと対峙して、起訴するかしないかの判断を行い…というゲームでした。
最初は『普通』にやる気のある優秀な女性警察官だった主人公も、どんどん大きな組織の一部となっていき、最後には…という、警察社会の加点主義・成果主義を描いたお話でした。
これをプレイしていて…今から10年近く前に見た映画『日本で一番悪い奴ら』を思い出したんです。
私は幼いころから警察官に結構憧れていて…。
きっかけは、うちの母がよく2時間ドラマを見ていたから、なんでしょうかね…。
ただ母は、見始めたはいいんですが最後まで見る前にこたつ(じゃないときもありますけど)で寝てしまうタイプで、結末がどうなったかを私に聞くんですよ。
なので、自然と「母に説明するため」と私が真剣に見るようになってしまうわけですね。
火曜サスペンス劇場、土曜ワイド劇場など、昔はたくさん2時間ドラマがありました。
今や国民的ドラマになっている『相棒』も、『土曜ワイド劇場』の時代は見ていました。
『法医学教室の事件ファイル』『浅見光彦シリーズ』『赤い霊柩車シリーズ』『小京都ミステリー』などなど、シリーズものも大好きです。
まぁ、どれもだいたい警察官としてでてくる人物はポンコツなことのほうが多いんですが、それでも『事件』にカタをつける職業ということで憧れていたんだと思います。
ただ、なにかの小説で「女性は尿管が短いから、トイレの『小』をあまり我慢できず、張り込みには不向き」みたいな記述を見つけて、「あぁ、私トイレ近いからなおさらダメだ…」と『警察官になる』という夢は抱かなかったように思います。
まぁ、実際に死体とか見たくないですし…。
で、『日本で一番悪い奴ら』という映画は、私の『憧れの警察像』を木っ端微塵に打ち砕いてくれた映画でもありました。
いや、報道とかでも警察官の不祥事とか知っていましたし、そもそも完全な『ホモソーシャル』の職業だからいろいろあるだろうな、とは思っていましたよ。
でも、こんな…と。
こんなことが本当に起こっていたのか…と、とても怖くなりました。
主演の綾野剛さんの演技も素晴らしく、本当におもしろい映画ではあったんですが、まーショックでしたね。
『リーガルダンジョン』をやったときにそれを思い出して、「そういえば、あの映画って原作あったのかな」と。
探したら、この本がそうでした。
しかも、綾野剛さんが演じていた主人公である諸星のモデル・稲葉圭昭さんが直々に書いた本でした。
まー、こうなったら読むしかないですよねー。
内容としては、ほぼ映画で知っていたとおりでした。
でもまぁ…読み進めていくうちに暗い気持ちになりますね…。
警察ってこんな感じなのか、と。
というか、『自分が信じてきた警察像・正義』みたいなものが、どんどん崩れ落ちていく感覚です。
とても、とても悲しいです。
『リーガルダンジョン』のときにも書きましたが、『一般市民』とは違う権限を持っている警察官に、こういうことをやられてしまうと、何ともできない…。
何を信じて行けばいいんだろう…と放り出されたような気持ちになってしまいます。
作者の稲葉さんは、きっと最後まで純粋に『職務』を遂行すべく一生懸命がんばっていたんだろうな、と思います。
映画でもそのように描かれていました。
自分がずっとずっと信じて拠り所にしてきた『所属組織』に裏切られて、とても辛い思いをしただろうことも、想像できます。
まぁ、だからといって、やってしまったさまざまなことが、簡単に許されるわけではないでしょうけど…。
組織として、こんなに忠実にがんばってくれている人をバッサリと切るなんて、ほんと恐ろしいなと思いました。
それこそ『リーガルダンジョン』でも同じですが、加点主義・成果主義さえなかったらこんなことは起きなかったのだろうか、と思ってしまいます。
ただ、こういう仕事だと、やっぱり加点主義にならざるを得ないだろうな、とも思います。
そうじゃないと、評価をうまくつけられないでしょうから…。
難しいです。
稲葉さんが関わった事件はその名の通り『稲葉事件』として、Wikipedia にも詳細が載るような大きな事件でした。
この時に国内に流れ込んできてしまった大量の覚醒剤が、その後国内でどのように広まっていったのかを考えると、ちょっとめまいを起こしそうです。
映画を見てて思いましたが、最後の方は本当に雰囲気がおかしくて、「この人たちは一体なんのためにこの仕事をしているんだろう…?」と思うような感じでした。
まさに、目的と手段が入れ替わってしまっているというか…。
でも、どうすれば良かったんでしょうね。
私なんか、全然関係のない人間だからどうもこうもないんですが、警察に憧れる一市民としては、ずっと憧れさせてくれる存在であってほしいなって、勝手に思ってしまうんですけどね。
この事件ではいろんな人も亡くなってしまったようですし、稲葉さんも逮捕されて収監されて、出所してきていろいろ大変だったことでしょう。
そして、本書を書き上げて世に出して…。
その後ちゃんと普通に生活できてるかな、と余計な心配もしてしまいますが、どうなんでしょう?
今、70歳を超えられたあたりだと思うんですが、幸せに生活されているといいのですが…。
小説として気軽に読んだとしたなら、「とてもおもしろかった」と言えるですけど…フィクションではないのでなんとも…。
というか、映画を見た当時も思ったんですが、こんなに大ごとになっていたって全然知らなかったんですよね…。
Wikipedia によると2002年ころの話のようで、私は大学卒業して就職したあたりでした。
一人暮らしして、仕事になれるのに大変で、あんまりテレビを見なかった…ってことなんでしょうかねー。
世事に疎すぎるのも問題ですね。
Kindle Unlimited で読みました。
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