太田愛さんの『幻夏』を読みました。
先日の『犯罪者 下』の続編です。

『犯罪者』を読み終えて、すぐにこの続編『幻夏』を読み始めました。
『犯罪者』とこのあとの『天上の葦』は上下巻なんですが、この『幻夏』だけは1巻で終わっています。
『犯罪者』は修司、『幻夏』は相馬、『天上の葦』は鑓水が、それぞれフィーチャーされています。
太田さん、相馬があんまり好きじゃないとか…?
…というわけではなさそうですね(笑)。
ボリュームは少なめですが、ずっしりとした重厚な物語でした。
今回は、相馬の幼少期の思い出から始まりました。
現在は警察官として大きな組織に所属しながらも、『はぐれもの』として一人での行動を主に行う相馬。
正義感は強いものの『駒』にはならないタイプのようです。
そんな彼ですが、小学6年生のときにわずか数日間だけ一緒に時を過ごした友人たちのことを、今でもずっと大事に、そして忘れずに心に刻んでいました。
水沢尚と拓の兄弟です。
相馬の転校と、尚の『失踪』で、それからの彼らとの縁は途絶えてしまいました。
…同級生が失踪するなんていう大事件、人生でもそうそう起きないことですよね。
わずか12歳程度の子供にとって、とても大きな心の傷になっていたと思います。
そしてそれは当然、失踪した本人にとっても、です。
そんな小さな体でこんなにつらいことに耐えて、今までためてきたお小遣いを使い果たしてがんばったのに報われなくて。
もう、「こうするしかない」と思ってしまったんですね。
これが今だったら、インターネットなどで簡単に解決できることですが、当時はそんな便利ツールもなかったわけで。
だからこそ、こんな極端な行動に走らざるを得なかったんですね。
一生懸命考え抜いた結論がこれって、本当に本当にかわいそうだと思いました。
他にどうにもできなかったかな…。
誰にも相談できなくて、本当に追い詰められていたんですよね。
自分の人生を犠牲にしてでも弟を救いたくてやったのに、数年後とはいえ心無い人のせいで弟はそれに気づいてしまって。
そこで、弟は壊れてしまいました。
もちろん弟がやったことは本当にダメなことです。
でもこっちも、どうにもできなかったのかな…。
今回、相馬は警察での誘拐事件の捜査からこの事件に関わります。
一方で修司と鑓水は、鑓水が経営している興信所の以来をきっかけにこの事件に関わります。
鑓水の依頼主は水沢尚・拓の母親である香苗でした。
不思議ですよね、23年も前に失踪した息子を探してほしい、なんて。
私だったら「気が触れてる」として取り合わないだろうなー…と。
23年前の小学生の失踪事件、今起きている少女の誘拐事件、これらが繋がる先には、昔の冤罪事件がありました。
冤罪、本当に怖い言葉ですよね…。
冤罪で8年も服役して、出所してすぐに冤罪だということがわかり、その足で家族に会いに行ったのに、こんなことになってしまって。
もちろん、『家族』を責めることはできないと思います。
だって事実を知らされていなかったら、今でも恨みに思っているのは当然ですよね。
でも、何かが1つでも違っていたらこんな結果にはならなかったのに…。
せめて、『寄り道』することなくまっすぐ家族に会いに行けていたら、『この場所』で会うこともなかったのに。
そう考えると、すべての元凶が『アレ』だと思ってしまうのも、仕方ないような気がしてしまいます。
全体的に悲しい話で、やりきれない事件が描かれている本書ですが、1つ嬉しい報告がありました。
相馬は、前作『犯罪者』で知り合った中迫さんの妹である碧子さんと、ちゃんとお付き合いしているようです。
これは良かった、本当に。
彼、なんだか放っておいたらずっと一人で生きていってしまいそうな人なので、一緒にいてくれる人ができて本当に良かったと思います。
…尚にも拓にも、そういう人がいてくれればよかったんですけどね…。
やっぱり、小さな子が悲しい・苦しい思いをする話は、読んでいてしんどいですね。
でも、生きていてよかった。
これからどうなるかわからないですけど、死ななくてよかったです。
終章が、序章のアナザーサイドというか前日譚になっているところが、また「うまいなー…」と思いながら涙を流してしまいました。


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