天樹征丸さんの『小説 金田一少年の事件簿 (3) 電脳山荘殺人事件』を読みました。
先日の『小説 金田一少年の事件簿 (2) 幽霊客船殺人事件』の続刊です。
この小説第3弾から、ついに元ネタのないオリジナルの話になってきました。
『小説版金田一少年の事件簿』が、十分に熟してきたという手応えがあったんでしょうかね?
今回の話、この『小説版金田一少年の事件簿』の評判の中でいうとかなり高いみたいですね。
たしかに、今読んでもすごいトリックだなと思いますし、天樹さんご自身が「このネタを金田一の小説でやるか普通の小説でやるか迷った」とおっしゃっていたというのを何かで見た記憶があります。
たしかに、『金田一』の冠がなかったとしてもおもしろい小説だっただろうな…と思いますね。
そして余談なんですが、私ずっと勘違いしてたんですよねー。
「電脳山荘って、確か一番最初にめっちゃ高い天井のところで首吊りが起きるやつだよね」と。
今回読んで、最初「あれ、違った???」と混乱してしまいました。
それ、多分次の『鬼火島』の方ですね…。
そっちもなかなかおもしろかった記憶があるので、次回まで楽しみにしておくとして。
今回は、2つの『入れ替え』が交差するという、かなりおもしろいトリックでした。
評判が高いのもうなづけます。
登場人物が『ハンドルネーム』で呼び合う空間というのは、この間読んだ『十角館の殺人』に通ずるものがありますね。
『十角館の殺人』は1987年なので、金田一のほうが10年近く後ですけどねー。
あと、この『電脳山荘』のメンバーが前にやらかした『殺人』の方は、『探偵学園 Q』の『幻奏館殺人事件』、みんなが少しずつ参加してトータルでバイオリニストが凍傷で指を失ったの話と同じような方法でした。
あとがきで「邪宗館殺人事件を執筆中」って書いてあったんですけど、なるほどそういう時期かーと。
『邪宗館殺人事件』が、一応このノベルス版の連作の中では最終になっちゃうんですよね。
この合本版の一番最後に収録されてると思います。
それも楽しみに読み続けていくつもりです。
にしても、金田一『少年』の方でも(30th とか)と金田一くんも美雪も普通 PC 使って生活しているような状態なんですが、この時は「インターネット触ったことないみたい」感じでした。
時代を感じるなーと思いました。
いつも思いますけど、ずっと高校2年生で過ごせるって羨ましいような、怖いような、不思議な感覚になりますね。
まー、そもそも不思議なんですけどね。
にしても、「殺されてしまった先生のもとに自殺志願者の高校生から電話がかかってきて…」というのが今回の導入の部分だったんですが、今の時代であれば急にかかってきたら電話は警戒して出ないなーって。
もちろん、彼は『先生』だったので、電話に出るのが当然だったのかもしれませんが、すでに退職していたわけですし、「出ない」という選択肢もありますからね。
それから、犯人が「その女子高生を死なせないようにするのが私の務め」と先生の遺志を引き継いだみたいな感じでしたが、これも今の時代だったら「そんなの引き継がないよ」って感じですかねー。
熱血教師みたいな人は、もうほとんど絶滅危惧種でしょうからね…。
今回のような、犯人にとってのターゲットが一か所に集まっている場合、それこそ爆弾で「ドカーン」とかのほうが確実性があるような気がしちゃいますね。
もしくは船上パーティー開いて沈没させるとか。
そんなことやったら、小説的にはまったくおもしろくないでしょうけどね…。
改めて読んで、おもしろさを再発見できてよかったです。
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