太田愛さんの『天上の葦 下』を読みました。
先日の『天上の葦 上』の続刊です。

山波さんを追って、3人が曳舟島を訪れたところから再開です。
ところどころ差し込まれる島のどこかに監禁された人物の描写、それが山波さんだと思っていたんですが、そうではありませんでした(再読なのに…)。
なるほど、こっちか…。
曳舟島に来たばかりのときは、結束の硬そうな島民の排他的な視線に、違和感を通り越して恐怖を感じていました。
ですが、その態度はこの島に住む人達が戦時中の思いを忘れないように必死で日本を守ろうとしていたためでした。
謎の老人がテレビを通して伝えた伝言、それを受け取って必死に戦おうとしてくれた島民たち。
若いときに不可抗力とはいえやってしまったことに対して、深い後悔の念をずっと抱えていて、もう同じ轍は踏むまいとしていたんですね。
本当に偶然なんですが、先週娘が学校でもらってきた『朝日小学生新聞』に、矢田稔さんの記事が載っていました。
記事には、
「子どものころ正しいことだと思い、戦争を応援する歌を歌っていた矢田稔さん(95歳)。戦争が終わったあと、自分の歌が戦争を後押ししてしまったのではないかと後悔し、その償いをしようと自分の体験を伝える活動を続けています」
とありました。
これ、まさにこの小説の内容と同じですよね…。
実際にこんな風に考えて、こうやってつらい思いを抱えながら生きてきた人がいらっしゃるんですね。
その人生に思いを馳せると、涙が出てしまいます。
一方で。
確かに『報道の自由』は守られるべきだとは思いますが、『オールドメディア』と言われる業界の中では偏向放送が普通にまかり通っているなとも感じています。
テレビ番組によっては見るのも憚られるものも少なくないな、と思いますけど…。
まぁ、見なきゃいいんですけどね。
実際「テレビを見なくなっても、別に私の生活には何も変化がなかった」というのが、ここ10年くらいでわかったんですよねー。
Amazon のレビューの中に『現代のマスコミやジャーナリストを美化しすぎ』というのがあって、「あー、なるほど、これだなー」と思ってしまいました。
前々作の『犯罪者』のとき、今回の鳥山さんが務めているようなネット専業のサイトや YouTube のようなプラットホームがあったら、真崎さんはあんな無謀なことをしなくても良かったのかもしれないのに…と思いました。
『犯罪者』が発売されたのが2012年なので、あの事件の時系列としてはそれより前ですから、まだ YouTube も今のような状態には程遠かったですもんね…。
(HIKAKIN さんが YouTuber 専業になったのが2012年のようです)
この『天上の葦』も2017年の小説のようですので、今から10年近くも前なんですよね。
今となってはマスメディアの影響ってここまで強くないんじゃないかな…と思ってしまいますが、10年前だとこんな感覚だったのかもしれないな、とも思いました。
多少もやっとする部分もありましたが、戦時中の情報戦が細かく書かれていて、とても勉強になったと同時に「確かにこれは繰り返されてはいけないな」とも思いました。
この延長に、同じ太田愛さんの『彼らは世界にはなればなれに立っている』の世界があるのかもしれない、とも思いました。

しかし、今回のこの一連の事件。
鑓水に調査の依頼をした磯辺は、一体どこまで全体がわかっていて依頼したのかな、と。
恐ろしいですねー。
正光さんと白狐さんの一連の物語のどこかで少し接点があった、とかではなかったと思うんですけど。
これくらい見通せる人物だからこそ、『大物政治家』たり得た、ということなんでしょうか。
…そして、いい加減鑓水のこと許してあげてほしいな…。
3部作を読み終えました。
内容的には、一番好きなのは『幻夏』かな。
今でも、小6の男の子がためたお小遣いをはたいて神戸まで向かう道中のことを思い、胸が詰まる思いがします。
もちろん、『犯罪者』も『天上の葦』もおもしろかった。
最新作の『最初の星は最後の家のようだ』はまだ読めていないので、機会を見て読もうと思います。


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