湊かなえさんの『境遇』を読みました。
湊さんの小説は『告白』以来です。
レビューにもあった通り、私にも聞いててある程度話の流れが読めていたというか、最後は「まぁそうだろうな」と思っていたところに落ち着いたという印象はありました。
ただ、ナレーションの松雪泰子さんが本当にすごく上手で、引き込まれるような感じで。
本当におもしろかったです。
10年以上ずっと一緒にいて、家族のように接してきて、それでも『そういう理由』で『こういうこと』をやってしまうのかなー、っていう複雑な思いはあります。
あと、新聞記者として十分認められていて、それでもやっぱり『やきもち』というか『嫉妬』というかってあるんだなー、って、なんだか晴美がもったいないなと思ってしまいました。
陽子は完全に『光属性の人』で、根性の悪さみたいなものはなくて。
旦那さんの正紀もそういう人で、これはすごく安心しました。
正紀のようにこういうクリーンな感じの人が政治家だったら、日本も良くなるだろうなと思うんですけど…実際はそうじゃないですねー…。
正紀のお父さんみたいに裏金とかねー。
リアルでも、先日の衆院選のときは連日その話題ばかりでしたが。
まー、正紀もひょっとしたら後ろめたいことの1つや2つあるかもしれないですけどね。
だって、政治家でいる限り、真っ白でいられることなんてないでしょうから。
でも、晴美と正紀が両方とも「陽子は殺人犯の娘だ」と勝手に思い込んでしまったっていうのは、ちょっと不思議だなと思いました。
逆のパターンもあるでしょ…と。
被害者の娘である可能性もあるだろうし、晴美の方が加害者の娘であるという可能性ももちろんあるだろうし。
…実際はそれが正解だったわけですからね。
そっちにはまったく触れないで、『陽子の方が犯罪者の娘』って完全に刷り込まれてしまったというのは、なんでなんだろう…と。
ここがちょっと「なんだかな」と思ってしまったところでした。
あとは、この事件がこういうふうに終息してから、それでも2人はちゃんと友達を続けられていたのかなって。
最後の方には「10年以上経ったから、そろそろ語ってもいいかな、ということで」みたいな感じの記事があったので、訴えられたりとかそういうことは結局なかったんだろうなとは思うんですが。
実際、今までと同様の家族のような関係を続けられていたのかな? とは思います。
まー、結果として息子にとって嫌なものではなく、「ママのお友達の晴美ちゃんと一晩仲良く過ごせて良かったな」っていう思い出になってたので、それは良かったなと思いました。
誘拐されて、しかもママのお友達が犯人だったって知ったら、心にはものすごい傷になっちゃうでしょうからね。
結局、女の敵は女ってことなのかなー。
なんだか悲しい気もしますが、どうなんでしょうか。
まー、正紀を巡る三角関係とかでなくて良かったな、とは思いました。
一番最後、「これは決して悲劇ではない」というフレーズが、「この事件を美談として語らないでほしい」という晴美の決意のように感じられて、なんかグッときました。
この小説は、もともとテレビドラマ用に書き下ろされたものなんだそうです。
そのドラマで主演を努めたのが、松雪泰子さん。
そのつながりで、今回の朗読になったんでしょうね。
前回の『告白』と同じ感じです。
松雪さんは陽子の方で、晴美はりょうさんだそうです。
なるほどなー。
松雪さんは陽子のような役でも晴美のような役でも、どちらでもできそうな女優さんですね。
陽子の夫の正紀は沢村一樹さんだそうです。
これも絶妙な感じがします。
最初にも書きましたが、ナレーションに松雪さんのうまさがとても良くでていて、聞いていて本当に心地よかったです。
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