横山秀夫さんの『動機』を読みました。
横山さんの小説は『半落ち』以来です。

「横山さんの作品をもうちょっと読みたい」と思い、すでに持っているものからこれをチョイスしました。
購入したのは2021年、再読でした。
内容は結構覚えていましたねー、やっぱりおもしろかったということなんでしょうね。
本書は短編集で、4つの話が入っていました。
最初は表題作『動機』。
確かに、『30人分の警察手帳の盗難』なんて大スキャンダルですよねー。
そもそも、『制服警官は非番時には警察手帳を警察署に預けなければいけない』となっているとのこと、知らなかったです。
一方で、私服警官(刑事)は常備しているらしいですね。
『金田一少年の事件簿』の剣持さんや明智さんがスッと胸元から警察手帳を出すのは、別に違反しているわけではない、ということですね(笑)。
刑事さんのイメージしかなかったので、そもそもこの制度が実在すると思っていませんでした。
今回の事件「『誰』がターゲットだったのか」というところに考えが至れば、「なるほど、こうするしかなかったのか」と頷ける話でした。
(もちろん、こんな『事件』にしてしまっていいわけじゃないですけど)
しかし、その間に様々な人の憶測やら嫉妬やら横槍やら、本当にいろんなことが起きすぎますね…。
警察という場所は、本当に息苦そうで大変だなと思ってしまいます。
「疑うのが仕事」というよく聞くセリフ、まさに職業柄ということで理解できますが、最近流行りの『職場における心理的安全性』とはかなりかけ離れているな、と思ってしまいました。
だからこその、「非番のときは警察手帳を置いて帰りましょう」ということなんだと思うんですけどねー。
こうなると、結局どうすればいいのかわからなくてぐるぐるまわってしまいそうな気がします。
2つ目は『逆転の夏』。
今度は一転、出所した前科者が主人公となり、不思議な電話依頼を受ける話です。
前科者の出所後の様子は、以前読んだ『護られなかった者たちへ』の利根くんの様子や『刑務所しか居場所がない人たち』を読んで、とても難しい問題だなと感じていました。


で、今回もやっぱりそう感じました。
主人公の山本が服役するきっかけとなった事件、単純に「山本だけが悪い」とは言えないところには、同情してしまいます。
でも、やっぱり彼は『大人』ですからね…。
前回読んだ同じ横山秀夫さんの『半落ち』で、「(性犯罪は)地位も名誉も職業も関係なしに、男であれば例外なく罪を犯す素質を持っている」と書かれていました。
…それを『男性』の作者が書くことのリアルを、すごく感じました。
これもまさにそうなんだろうな、と。
かといって、やっぱり「誘惑に乗らなければ、こんなことにはならなかった」とは思います。
私は男性ではないので、男性の性欲が果たしてどんなものなのか想像しかできないですけど、それが抑えようのないほど強いモノなんだとしたら、かわいそうだなと思ってしまいます。
でもなー…。
山本には妻も子供もいたわけですからね…。
あの瞬間、『理性』が勝ってほしかったな、とは思いますけど。
一方で、そんな山本の立場を利用した人たちも、またかわいそうではありました。
この2つの事件をかけ合わせて1つの物語に仕上げるというのが、本当にすごいなと思いました。
ただ、結局誰も幸せにならない話でしたね。
でも、山本自身は『生きていくこと』に意味を見出せたんでしょうか。
だったらいいなと思います。
3つ目は『ネタ元』。
これもすごい話でした。
確かに、意味もなく見返りもなく『こんなこと』するはずなんてないですもんね。
相手だって危険な橋をわたったわけですから、彼女に対する『厚意』もしくは『好意』みたいなふわっとした理由でこんなことするはずもなく。
そのことについて、もうちょっと深く考える必要があったんだろうな、とは思いました。
現に、言われてすぐに『その状況』を思い出せたわけですからね。
でもまぁ、これがきっかけで、ある意味『愛社精神』的なものが芽生えたのであれば…意味はあったのかな、なんて思ってしまいますけど。
いずれにせよ、他人に聞かれて・見られて困ることはしない方が良い、という教訓にしようと思います。
最後は『密室の人』。
これはねー、奥さんが浅慮すぎますね。
こんなことになってしまえば、結局は自分の首を絞めることに繋がるわけですよ。
まぁ、それが分からないぐらいテンパっていたんでしょうけど。
しかし、本当に世界が狭いー!
最後まで通して読めば、すべてがちゃんと繋がるんですけど、「なんで他人に自分の妻のことをこんなに心配されなきゃいけないんだ」という疑問、本当よくわかります。
正直、気持ち悪いですもんね。
奥さんが『前の彼氏』とどういう経緯で付き合ったのかはわからないのでなんとも言えないですけど、まぁおそらく男のほうが悪いんだろうなー、と思ってしまいますね(笑)。
奥さん、まだ若かったでしょうに。
そんなことで若さを無駄にしてしまって、かわいそうです。
結果、何もいいことないですね、本当に。
『裁判官は常に聖人君主であれ』と言いたいわけではないですけど、でもそんな人に裁かれるのも嫌だなーと思ってしまいますよねー。
最後ははっきりしない感じで終わってしまいましたが、結局どうなったんでしょうか。
奥さん、いるといいな、と思います。
横山さんは、短編も長編もどちらも本当におもしろいですねー。
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