山本譲司さんの『刑務所しか居場所がない人たち』を読みました。
山本さんの本は初めてです。
いつも思いますが、こういうのはものすごく、ものすごく難しい問題ですね…。
今までも『ケーキの切れない非行少年たち』などを読んで、知的障害・発達障害を持つ人が犯罪に巻き込まれて受刑者になるケースが少なからずあるというのは知っていました。
でも、まさかこんなに『介護施設状態』だとは思ってもみませんでした。
国や行政の支援・制度があまりにも整っていないんですよね。
かと言って、「そっちに割く予算があるんだったら我々を助けろ」という声が上がるだろうなとも予想されるので、なんとも…。
受給者1人を収監しておくのに年間300万円と聞くと、正直「なんだかな」と思ってしまいますし、凶悪犯罪が報道されて小さい子供や若い女性が被害者になっているような事件の加害者にそんなにお金を使われてのうのうと生きてられるのは正直嫌な気持ちしかしないです。
でも、本書に出てきた例なんですが、たった300円を賽銭箱から盗んでしまった知的障害の男性が、「累犯だから」という理由で受刑者になっているという事実を知って、なんだかやりきれない気持ちになっってしまいました。
確かにズル賢い人だったら、「反省している」などと被害者に手紙を書いたり、そういうポーズを取ることで自分の罪を軽くすることができるし、そんな風に入れ知恵をしてくれる弁護士もたくさんいるんでしょうけど。
知的障害のある人ですとそんなことはきっとできないんだろうな…と。
なんか本当に辛いなと思いました。
にしても、『裁判官や弁護士が「いつから知的障害なのか?」とか「どうして知的障害になったのか?」とか「どうしたら治るのか?」みたいな質問をしてくる』と本書には書いてあったんですが、「そんなことがあるのか」と愕然としてしまいました…。
そういう法曹界にいる人達は、いわゆる『日本で一番難しい』とされている司法試験に受かったり受験したりするくらいの知的能力の持ち主ばかりだと思うんですが、そんな知識しかない人もいらっしゃるんですね。
まぁ、自分の興味のある分野・必要な分野以外のことというのは、人間誰しも知識が乏しいのは仕方ないんですが…。
でもまさかそんな状態だとはな、と。
ショックでもありました。
普段そういう世界とはまったく切り離されたところにいらっしゃるからなんでしょうかね…。
人ごとじゃないんですけどね…。
あとは、家の近所に障害者の施設とか建てられてしまったら、やっぱり「嫌だな」という気持ちが一番に出てしまいますよね。
職場に前科のある人が入ってきたら、前科の種類にもよるかもしれませんが、やはりかなり身構えてしまうと思います。
でも、障害があるがゆえに犯罪に結びついてしまう人たちもいる、ということは忘れないようにしたいです。
「窃盗や食い逃げのような犯罪が多い」と書いてありました。
知的障害や発達障害が重度の人たちで、ちゃんとルールを教えてもらっていなかったりすると、こういう犯罪行為を行ってしまうのもわからなくもないです。
男性の場合だとそうなりますが、それが女性だと、騙されて風俗とか AV の方に行っちゃう子もいるんでしょうね…。
うちの中1の息子は、一応知的には問題がないので大丈夫だと思いたい部分もあります。
でも、社会から爪弾きにされて、孤独の中で良くない人たちに声をかけられて、仲間意識が芽生えてしまって…ということはあり得ると思います。
そういうのは気をつけていかないといけないなですね。
『過保護』とのバランスがうまくとれるといいんですけど…。
『日本は福祉後進国』というのはよく聞きますが、「こんなにひどいのか」と愕然としました。
本書にはふりがなもたくさん振ってありますし、文体もとても柔らかで、副題に『学校では教えてくれない』ともついていることから、学生とか若い子が読むことを想定した本なんだなという感じです。
実際、1時間ちょっとぐらいで読み終えました。
内容はとてもおもしろかったんですが、まーちょっとヘビーではありますね。
というか、難しいです。
実際、私自身ができることっていうのは、何かあるんでしょうかね…。
ただ、『ケーキの切れない非行少年たち』にもありましたけど、出所したあとにちゃんと『納税者』になってもらえるようにしていかないと、法律的にも経済的にも『失敗』になってしまいますね…。
私としては、せめて息子はちゃんと『納税者』になるように、がんばっていきたいと思います。
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