儚い羊たちの祝宴

読んだ本

米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』を読みました。
米澤さんの小説は『満願』以来です。

満願
米澤穂信さんの『満願』を読みました。米澤さんの小説は『I の悲劇』以来です。 今回の作品は短編集、どれもなんというか物悲しい雰囲気の漂う話ばかりでした。 1つ目は『夜警』。確かに、自分の過ちを隠すために新しく事件を作るような人は、警察官には

なんというか、全編ダークな雰囲気をまとった短編集でした…。
これは『連作短編集』なんでしょうか?
登場人物の誰かが『バベルの会』という読書サークルに所属している・していたという経験があるというのが共通点なんですが…。

1つ目は『身内に不幸がありまして』。
いやー、初っ端からすごいです。
なかなかヘビーなの来たーーーって感じでした。
まさかサークルの合宿に出ないようにするために、身内の不幸を『作り出す』なんて。
そのために『人を殺す』という手段を使っていたとは。
お兄様、おばさん、おばさん、夕日。
それで大学の4年間がちゃんと潰れてくれたということですかね…。
いやー、怖い。
他に欠席理由作れなかったのかな…。
まぁ、『合宿の欠席の理由作り』と『自分にとって不要な人排除する』という両方に当てはまってしまったからこその決行だとは思うんですが。
でも少なくとも、夕日は一生懸命仕えていたと思うんです。
お嬢様のことをいつも一番に考えていたのに、こうされてしまうとは悲しいです…。
まぁ、吹子さんにとっては、『愛情』を向けてくる使用人はいらなかった、ということなんでしょうね…。
最後、拘束は解いてあげたんでしょうか。
そうじゃないと薬は飲めないから、そうなのかな。
ずっとお嬢様に尽くす人生だったから、ある意味幸せだったのかもしれないけど…いや、そんなことないですよね。
せめて『そうされる』理由ぐらい教えて欲しかったでしょうにね。
高校卒業した後だから、まだせいぜい20歳になってないかぐらいなのに。
とてもかわいそうでした…。

2つ目は『北の館の罪人』
前回の『身内に不幸がありまして』とちょっとシチュエーションが似てるので、続きの話かと思いました。
でも、別の話のようです。
最初に書いたとおり、やっぱり共通点は『バベルの会』。
にしても、最後の最後にやっぱりぞっとしました。
「赤い手袋になる」とは、要するに自分が彼女に殺されるんだろうということに薄々気づいていた、ということなんでしょうね…。
どんな気分だったのでしょうか、毎日少しずつ毒を盛られてるっていうのは。
そして、彼女はどこまでやるんでしょうかね…?
この絵を見て、考えを改めてここでやめておくのか?
それとも、さらに続けるのか?
先が知りたいような気もしますが…ここで終わりなんですよね。

3つ目は『山荘秘聞』。
「なんだこれ、ただのいい人じゃねーか」というのが率直な感想(笑)。
でも、ここまで来るのにずっとずっと怖いと思っていました。
だって、明らかに「ある」のに何も言わないんだもん、どういうこと? って。
『めったに手に入らない肉』もあるっていうし…もちろんそういう風に想像するように誘導したんでしょうけど…、あまりにも怖くてちょっと体がこわばっていました。
先日読んだ『いけない II』の『明神の滝に祈ってはいけない』を読んだときのような緊張感がありました。

いけない II
道尾秀介さんの『いけない II』を読みました。道尾さんの小説は『いけない』以来です。 前回の『いけない』と同じような趣旨の小説です。表示された絵が、物語の真相だったり恐ろしい気づきを与えてくれたりします。今回は4つの短編が入っていました。

しかも後ろ手に『レンガ』!
「これは…」と思ったら…。
『レンガ』がお金の隠語だっていうのは知っていましたが…本当に『1000』ってことでいいんでしょうか…?
それじゃあ、本当にただの慈善家じゃないですか…。
本当にびっくりです。
人間、ここまでの狂気に達するとそうなっちゃうのかな、なんて思ったりします。
今回もまた『バベルの会』の話が出てきていました。

可燃物の山の話をちょっと思い出した。

4つ目は『玉野五十鈴の誉れ』。
これもまた、最後の一文でぞわっときました。
まさか、2人の思い出の歌がこんなところで鍵となってくるとは…。
五十鈴は本当に最後まで言い付けを守ったんだな、と。
純香は五十鈴のことが大好きだったけど、五十鈴もまた純香のことが大事だったんだ、と思いたいですね。
あまりにも一方的すぎるのは、なんかかわいそうです。
しかし、この間読んだ『黒牢城』の黒田官兵衛もそうですが、ずっとずっと閉じ込められるってのはどんな気持ちなんでしょうか。

黒牢城
米澤穂信さんの『黒牢城』を読みました。米澤さんの小説は『可燃物』以来です。 私は正直、歴史小説が好きじゃないんです。私は宮部みゆきさんの小説が大好きなんですが、宮部さんの時代小説はほとんど読んだことがないんですよね…。 10代の頃、父に勧め

私はまぁ、正直外を出歩くあまり好きではないんですけど、だからといってずっと閉じ込められるのも嫌ですね…。
どちらも舞台が『現代』じゃないので、「非人道的」とか言われなかっただけですからね…。
まぁ、黒田官兵衛に至っては、身動ぎもろくにできないような大きさだったみたいなので。

最後は『儚い羊たちの祝宴』。
表題作です。
なるほど、『アミルスタン羊』というのは初めて聞いたんですが、そういう話が前にあったということなんですね。
要するに『ソイレントシステム』的な感じだと思っていいのかな?
まぁちょっと違うか。
この物語については、最後の1行が逆に救いになると思っていいんでしょうか。
「これまでのことが全部物語だった」っていう解釈を、私の中でしたいなと思っている部分があるんですけど…。
バベルの会は「読書会をして感想を言い合うサークル」と思っていましたが、「復活した」と言っているので、「今度は物語を書く人たちもいる」っていうことで…。
この辺の解釈は抽象的すぎて難しいですが、私は勝手にそう思おうと思います。
…全体的に怖かったです、はい。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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