七回死んだ男

読んだ本

西澤保彦さんの『七回死んだ男』を読みました。
西澤さんの小説は初めてです。

『SF ミステリー』と呼ばれるジャンルの作品です。
私が今まで読んだものだと、『黒い仏』、『教室が、ひとりになるまで』、『ノワール・レヴナント』とかでしょうか?

意外と読んでないものですねー。

『七回死んだ男』というタイトルから、最初は「ハードボイルド系」なのかななんて想像していました。
実際は、解説にも書いてありましたが、恋愛ものの要素も濃くて、なかなか新鮮な感じでした。
主人公の久太郎(ヒサタロウ)は『特殊な体質』を持っていて、その体質が発動してしまうと同じ日を9周繰り返すことになってしまうようです。
…嫌な体質ですねー(笑)。
『エンドレスエイト』よりも多い…まぁ、アレは『夏休みの2週間くらい』を繰り返していましたが。
その体質が、たまたま高校入試の日と重なったこともあり、彼は本人曰く『分不相応な超進学校』に通っているとのことで。
それは…いいんだか悪いんだか…っていう感じですよね…。
いわゆる『深海魚』っていうやつになっちゃっているんでしょうか。
ただ、その体質のせいで同い年の人よりも生きている時間が長いため、「老成している」「じじむさい」と言われてしまうこともしばしば、だそうで。
まぁ、確かにそんなこと繰り返してたらそうなっちゃうでしょうし、ある程度の『諦念』的なものも身についちゃいそうですねー。
そしてそのじじむささが、あとあと響いてくるのがおもしろかったです。

『七回死んだ男』というのは、その主人公の久太郎のことではなく、久太郎の祖父のことでした。
また、彼らの家庭はなにやら複雑な感じがしますし、今現在の状況もかなり複雑で、なんだかちょっとかわいそうだなと感じました。
物語の骨子としては、「祖父が死んでしまうんだけど、それを何とか阻止したいとがんばる久太郎」という感じ…だけではないというのが、なかなか説明が難しいです。
こういう『リピート系』ですと、やっぱり一番最初に思い浮かぶのは『リゼロ』や以前サンデーで連載していた『サイケまたしても』というマンガですけど、そちら側は『自分が死ぬ』ということで発動する繰り返しで、こちら側は「0時にならないと繰り返しにならない」ですし、必ず9周繰り返しますし、そもそもは『能力』ではなく『体質』なので自分の好きな時に発動できないですし…。
まぁ「使いづらいな」という感じではありますね。

繰り返し中は「できるだけオリジナルに沿った進行をする」という不思議な力が働くみたいなんですけど、今回に限ってはそれが悪い方向に働いてしまって、結局何回も祖父が死んでしまいます。
その『犯人』とおぼしき人たちを一堂に集めても、それでも祖父が死んでしまうので、どうしたらいいんだろう…と途方にくれてしまいます。
まぁ、ちょっとコミカルな感じもあって、そこがまたおもしろかったです。

しかも、一応の解決を見たあとにもう1個『謎』が隠されていました。
それを最後にある人が解き明かしてくれるんですけど、それが「あ、この話はやっぱり恋愛ものだったんだ」という感じで、なんだかちょっとほっこりするのが良かったんですよねー。
途中で久太郎は失恋をして、若干自暴自棄になる瞬間ががあるんですけど、それがうまい具合に伏線になっていたのもちょっとニヤッとしてしまいます。
解き明かされた真相も、まぁあとから読めば納得なんだけですけど、「よくそんなこと気づくよな…」と感心してしまいました。
それはやっぱり、その人も久太郎のことが気になっていてよく見ていた、ということなんですかね。

いろいろ、いろいろありましたけど、結局丸く収まりそうでよかったなー…と思っていたんですけど…。
最後の数ページでなんだか何かをぶん投げられた感じがして、「なんか不幸背負ってんなー」とかわいそうになってしまいました。
愛しの彼女に愛想つかされないといいですけど。
ちょっと心配です。
いろいろあったので、ぜひとも幸せになっていただきたいですからね。

コミカルなストーリー展開で、なかなかに読みやすくて良かったです。
息子にもおすすめしたいなと思いました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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