原田マハさんの『リボルバー』を読みました。
原田さんの小説は『<あの絵>のまえで』以来です。
『リボルバー』はずっと読みたいと思っていたので、今回読むことができて本当に良かったです。
前情報はほとんど持っていませんでした。
表紙の『ひまわり』とタイトルの『リボルバー』。
ここから連想するのは「ゴッホの自殺についての話」。
以前読んだ『たゆたえども沈まず』がすごく好きだったので、今回もそんな感じの話でちょっと結末が違うのかなー、なんて。
主人公の高遠冴は CDC という小規模なオークションハウスに勤めている女性です。
彼女はパリ大学で美術史を専攻し、ゴッホとゴーギャンの研究をしていました。
彼女には莉子という親友がいて、彼女は美術に関する仕事をしている両親を持ち、彼女自身も世界最王手のオークションハウスであるサザビーズで働いています。
毎日驚くべき値段がつく出品物を扱う莉子を、冴はちょっぴり妬ましく、そして誇りに思っています。
ある日、冴の働くCDC に錆びついた1丁の拳銃が持ち込まれます。
持ち込んだのは50代くらいの画家の女性、サラ。
サラはゴーギャンとゴッホの専門家である冴を頼って CDC に来たようです。
「あのリボルバーは、フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたものです」と、彼女は語ります。
冴はその発言の真偽を見極めるべく、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館でゴッホの展覧会を企画したキュレーターに面会したり、ゴッホ最期の地であるオーヴェール=シュル=オワーズの保存を目的とする非営利団体『インスティチュート・ファン・ゴッホ』の代表に面会したりしました。
しかし、そのリボルバーが本物であるという確証は得られません。
それをサラに報告しに行ったとき、冴はサラから彼女の生い立ちやリボルバーを手に入れた経緯などを聞かされます…。
という感じなんですが、そうなんです、『当時』の話ではなく、『今』の話なんです。
『たゆたえども沈まず』のようにゴッホが登場人物として出てくるんじゃなかったんですね。
もちろん、だからといっておもしろくないわけでは、まったくなく。
そして、ゴッホとゴーギャンの関係。
一般的には『狂気の画家』であるゴッホの気性に合わせられずにたもとを分かった、みたいな感じで知られているようですが、尊敬しつつも才能に激しい嫉妬をしているというこの小説のほうがしっくりくるような気がします。
そして、ゴーギャン、やばいな…。
めちゃロリコンじゃん!
後世に残るような素晴らしい絵を描くには必要だったんですかね…。
『残された人達』がかわいそうな気がします。
ゴッホの死は自殺である、というのが今の通説とのことですが、この本の解説の中で「映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』ではゴッホの他殺の場面が映像化されていて、それでは当時オーヴェールに住んでいたティーンエイジャーが犯人となっている」との旨書かれています。
その後解説では「少年の悪ふざけのせいでゴッホが命を失う場面を見せられて、真実らしさを感じられるだろうか」と続くんですが、私はかえって真実っぽさを感じてしまいますね…。
以前読んだ『罪の声』だったかな? うろ覚えなんですが、犯人の犯罪のきっかけがすごく些細な「仲間内での自慢」みたいな感じで、「こんなきっかけであの大犯罪が起きてしまったのか…」と愕然としたんですが(もちろんフィクションです)、なんかそういうのが意外と真相だったりするんじゃないかって。
そういう方がリアリティを感じます。なんか。
ちなみに、前回の『たゆたえども沈まず』で「解説が優しくない」みたいなことを書いたんですが、今回も同じ方の解説のようです。
同じくあまり優しくないんですが、前回よりも棘を感じないのは、私が慣れたからなのか実際に棘が少ないからなのか。
表紙に大写しになっているひまわりで、「ゴッホの物語」という感じがしますが、実のところは「ゴーギャンの物語」な気がします。
ゴーギャンについてはゴッホほど詳しく知らないので(ゴッホもそこまで詳しくないですが)、いろいろ調べてみたいなと思いました。
とにかく、おもしろかったです。読んでよかった。
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