ブラジル蝶の謎

読んだ本

有栖川有栖さんの『ブラジル蝶の謎』を読みました。
先日の『スウェーデン館の謎』と同じ『<国名シリーズ>』です。

今回は6つの話が入った短編集でした。

1つ目は表題作『ブラジル蝶の謎』。
結局、このタイトル『ブラジル蝶の謎』の回答としては、「目くらましだった」ということでいいのかな?
チョウチョといえば、『金田一少年の事件簿』の『黒死蝶伝説殺人事件』が思い浮かびます。
今回、斑目紫紋のような磔にはなっていなかったものの、人が殺されてしまっていました。
「浦島太郎状態の人が携帯電話を見たらどういう反応するか?」という感じで、なるほど10年ぐらい人とほとんど接することがなかったら、携帯電話なんてわからないものなのかもしれないな、とは思いました。
ちょっと似た感じとしては『金田一少年の事件簿』でも『速水玲香と招かれざる客』、脱獄して玲香ちゃんのファンクラブイベントが開催されている客船に紛れ込む話がありました。
この話も、「(この世界では超有名な)速水玲香なんか知らないみたい」なテイだったのをなんとかごまかして…という話でしたねー。
今回の人もそんな状態だったんでしょうか。
なかなかの早業でいいトリックだったような気もするんですが、残念ながら火村先生には見破られてしまいましたねー。
にしても、先に亡くなったお兄さんは蝶の標本を見ながら酒を飲むのが趣味だったのことですが、すごい趣味ですね…。
ゾワッとするなぁ。
この辺は、斑目紫紋感ありますね。
相変わらず、動機にはほとんど言及しないあたり、潔くて本当好きです。
最後がちょっと悲しい感じで終わってしまったのが、心残りですけど。

2つ目は『妄想日記』。
この症例が本当にあるのか、専門的なことはまったくわからないですけど、おもしろい話だなと思いました。
何やら自分の中で新しい言語を想像して、それで文章を書いてしまう…すごいことだなと思います。
まぁ、今回に限っては、それはでっち上げだったわけですけど。
にしても、そんな『危険な人』を抱えている中で、よくもまぁ外部から住み込みでお手伝いさんを雇う気になるな…というのが、小心者の私の意見です。
そんな状態なんだったら、身内でなんとかすればいいのに…。
それほど介護が大変だっていうことなのかな。
しかし、偶然『そんなこと』がなければ、大変ではあったかもしれないけど今まで通り普通に生活できていたかもしれないですね…。
そう思うと、なんだかちょっと悲しいです。
私としての結論は、「やっぱり車の運転は怖い」というところに収束してしまいます(ゴールド免許のペーパードライバーです)。

3つ目は『彼女か彼か』。
最初に出てくる『蘭ちゃん』が犯人かと思いました(笑)。
よくペラペラ喋るもんで。
真相を聞いてなるほどなーと唸ったのは「今の時代だったらわからなかっただろうな」と思ったからです。
多分、今の『そういう人たち』って、普通にヒゲの永久脱毛とかやっているでしょうから、一晩寝て起きたとしても伸びていないだろうなぁ、と。
『ヒゲ』といえば、『金田一少年の事件簿』の『速水玲香誘拐殺人事件』の犯人も、ヒゲの長さが2パターンあるというのがトリックを見破る鍵になりました。
やっぱり、美意識が高そうな女装をする男性は、昨今ではほぼヒゲの永久脱毛してるでしょうねー。

4つ目は『鍵』。
すごくシンプルなタイトルでした。
そして、火村先生が途中で犯人をバラしてしまうという展開もおもしろかったです。
最初に「これが何の鍵なのか判るか」と聞かれたとき、実は真っ先に『正解』を思いついた私でした(笑)。
もちろん、ものすごい当てずっぽうだったので、まさかまさかでびっくりしてしまいました。
しかも、『実物』って見たことなくて、ちょっと検索してみたら、なんかめまいがしそうな画像ばっかりで…ちょっと気持ち悪くなってしまいました。
『使用感』は悪そうですし、「痒くなりそうだな…」という感想です。
そんなに気になるんだったら、それこそ365日帯同させて秘書にでもすればいいのに、と思ってしまいますけどね。
よくわからんです。

5つ目は『人喰いの滝』。
滝の迫力と状況の不気味さから一転、犯行の様子はなかなかシュールな感じだっただろうな、という話でした。
いわゆる『雪の上の足跡』がキーになる事件だったんですけど、『誰の足跡が』『どのように』『いつつけられたのか』、雪が降っていた時間帯や事件が起こった時間なんかをいろいろ考えると、よくわからなくなってきます。
しかし、老人も変なことをしなければ、貧しかったかもしれないけど生きていることはできたかもしれないのにね…。
というか、近くにそんなすごい滝があるんだったら、ただ普通にそこに突き落として知らんぷりしているだけではダメだったのかな? と思ってしまいます。
まぁ、何かがダメだったんでしょうね。
謎解きのシーンのシュールさも想像すると、おもしろいなと思ってしまいます。
「去年のクリスマスの事件の時とえらい違いやないか」は『46番目の密室』のことだと書いてあって、答え合わせができてよかったと思いました。

最後は『蝶々がはばたく』。
最初に「恋人かよ」と声が出てしまいました(笑)。
2人で普通に旅行に行くんですねー。
仲良しでうらやましい限りです。
そして、なんだかおもしろい話だなと思いました。
実際は、何かトリックを弄したわけではないのに、たまたま起きた事象によって足跡が消えてしまって、結果『蒸発』したようになってしまった、と。
35年ぶりに無事なことが確認できて、さぞかし嬉しかったでしょうね。
アリスさんがたまたま遅刻しそうになって、かつ火村先生が遅刻したから聞けたレアな話でした。
世の中のいろんな『不可思議な事象』も、こんなふうにたまたま起きた偶然が積み重なっていたってことが、きっとあるんでしょうね。
にしても、あとがきで「書こうかやめようか、と迷った作品だった」とありましたが、確かに迷う内容ではあるだろうなと思いました。
私はどちらの災害も当事者ではなかったですが、その後起きた東日本大震災では両親が少し被災したので、懸念した気持ちはわかるような気がします。
でも、有栖川先生には「届きましたよ」と伝えたいです。

次で折り返し地点ですねー。
まだまだ楽しめるのが嬉しいです。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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