ハンチバック

読んだ本

市川沙央さんの『ハンチバック』を読みました。
市川さんの小説は初めてです。

2023年上半期の芥川賞受賞作です。
受賞された際の式の様子を少しだけテレビで見ました。
「車椅子に乗っている方なんだな」と思ったんですが、そのときはそれで通り過ぎてしまっていました。
式の様子を書いた記事なんかを読んでみたんですが、結構過激だったんですね!
ちゃんと授賞式見ればよかったなぁ。
「電子書籍のさらなる普及を訴えた」ありまして、私も賛同したいです。

『先天性ミオパチー』という名前を初めて知りました。
市川さん自身が罹患されているんですね。
だからといって主人公の釈華 = 市川さんでは必ずしもないとは思いますが、ご自身の生活とか考え方とかがかなり反映されたものなんだろうな、と理解しました。
小説には執筆の環境についても書かれていましたが、ブラインドタッチもできない、音声入力もできないという状態で小説を書くのは、かなり大変だろうなと。

そして、内容。
なんというか、すみません、「コメントに困る」というのが一番最初に出てきてしまいました。
これはたまに起きていて、金原ひとみさんの『蛇にピアス』『アッシュベイビー』、又吉直樹さんの『火花』なんかを読んだときも同様の感想でした。
最近読んだものだと、『コンビニ人間』とか。

コンビニ人間
村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を読みました。村田さんの小説は初めてです。 2016年の芥川賞受賞作です。一時期本屋さんに行くと常に平積みのところにおいてあった表紙なので、とても馴染み深いです。当時テレビか何かの特集で「コンビニで働いている

多分、私がいつも殺人事件とかミステリーとかの小説ばっかり読んでいるので、『事件』が『解決』していない小説を読み慣れていないからなんだろうな、と考えています。

読み終えて次に感じたのは「呪詛がこもっているな…」ということでした。
なんというか、すごいエネルギーをぶつけられたな、と。
これは、芥川賞のインタビューにも載っていましたが、ご本人が「怒りだけで書きました」「『ハンチバック』で復讐するつもりでした」「復讐は虚しいとわかりました」とおっしゃっていたので、まぁそれを受け取れたのかなと思いました。

『コタツ記事』という単語が出てきていて、ちょっと前にロケットニュースの『コタツ記事』について読んだところだったので、内容がとても腑に落ちました。

現役ライターが暴露する「コタツ記事」の仕組みと裏側、大手マスコミも抜け出せない魔の魅力
読者、メディア側の人間からも忌み嫌われがちな「コタツ記事」。Wikipediaに 「ジャーナリスト、ライターが現地に赴いて調査を行ったり取材対象者に直接取材したりす …

主人公の釈華が書いている文章の俗っぽさと、その間に入ってくる釈華の生活の様子のコントラストが激しくて、ちょっとめまいがするくらいです。

そして、キーパーソンの一人である田中。
この人は…またコメントに困る。
「かわいそうなヤツだな」とも「ひどいヤツ」とも思います。
何を考えて生きているんだろうな…考えないようにして生きているのかな…。
自分が持っているものと持っていないものを数えているように感じました。
『性』に関する提案とか、私はできないな…。
そういうアンタッチャブルな部分については、十人十色すぎて考えが追いつかないです。

久しぶりに、複雑な気持ちになった小説でした。

Amazon で『ハンチバック』と検索すると、検索ワードが『ハンチョウ』に変更されて『1日外出録ハンチョウ』(カイジのスピンオフ)がいっぱい出てくるのはどうかと思いました。

Kindle Unlimited で読みました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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