法月綸太郎さんの『ノックス・マシン 3/4 電子オリジナル版』を読みました。
法月さんの小説は『雪密室』以来です。

まー、所見での感想は「不思議なタイトルだな」ですよね。
どうやら、単行本・文庫版では『ノックス・マシン』というタイトルだったようです。
で、収録作品が4つあったんですが、Kindle 版ではそのうち3つのみ収録しているとのことで『よんぶんのさん』ということのようです。
収録されなかった作品は『バベルの牢獄』という短編なんですが、どうやら紙に決まったレイアウトで印刷された文字や句点(『。』)がキーになるとのことなので、Kindle 版で文字の大きさなんかが変えられる状況だとダメなようで…。
「この短編だけ固定レイアウト(画像)にする」という選択肢もあったと思うんですが、まーなんかわざとらしいし…という感じなんでしょうかね。
ちょっと残念ですけど、仕方ないですねー。
というわけで、『電子オリジナル版』には3つの短編が収録されていました。
なんだか不思議な話ばかりでしたねー。
1つ目は、表題作『ノックス・マシン』。
これはねー、先の展開がちょっと読めました。
主人公が中国人であること、双方向のタイムトラベルが実現する可能性があるということ、この2つで多分この結末になるだろうなっていうのが読めたので、的中してなんかちょっと嬉しかったです。
まぁ、確かにタイムマシーンの技術が完全に確立されてしまったら、推理小説なんてなくなってしまいますよね。
まさに犯罪が起きる直前に行って、発生を未然に防ぐ。
もしくは、その場で現行犯逮捕ができるようになってしまいますからね。
正直、それはおもしろくないですね…現実だったらそうなってほしいですけどね。
そしてそれは、以前読んだ殊能将之さんの『黒い仏』で感じてしまったモヤモヤ感だよな…と思い出しました。

やっぱりあれは禁じ手ですよねー。
1回こっきりの大博打って感じです。
それを、石動戯作シリーズでやられたのは、ちょっと悲しかったですけど。
殊能さん自身の作品数が少なかっただけに。
あとは、小川哲さんの『嘘と正典』の『魔術師』。

あれもタイムトラベルの話でした。
悲しい結末でしたけどね…。
今回の小説の中では、結局タイムトラベルの技術は確立してしまっていて、ちゃんと双方向のタイムトラベルは実現できたにも関わらず、できたということを本人が理解できぬまま戻っていってしまったというのがおもしろかったですね。
そして、加えられたその一文が、まさかこんな結末だったとは…という、繋がっていくところもユーモアに溢れてるなと思いました。
実際、何でそんな文が追加されたのか、まー理解できないですよねー。
私はその分野にはまったく詳しくないんですが、案外その前日とかに中国の人にちょっと嫌がらせされたとか、そんなレベルの話なのかもしれないなーなんて思ったりします。
途中の学術的な話はちんぷんかんぷんでした…。
読んでて「どうしようかな…」と思いましたけど。
2つ目は『引き立て役倶楽部の陰謀』。
これは正直、どういう立ち位置から読めば分からなくてずっと戸惑っていました。
アガサ・クリスティという作家がいて、それとは別にワトソンなどの小説の中に出てくる名脇役の人たちも実在しているという世界、っていうことでいいのかな。
その引き立て役倶楽部というのに入っている脇役の人たちが、アガサ・クリスティが発表する『そして誰もいなくなった』を酷評していて、なんとか発表を止めさせる、もしくは彼女を亡き者にするという相談をしている、という話でした。

これは完全に作家の法月綸太郎さんのオリジナルということでいいんでしょうか?
それとも誰かがすでに『引き立て役倶楽部』というものをどこかで発表していて、それを引用しているんでしょうか?
その辺もあまり分からなかったので、ちょっとふわふわしながら読んでいた感じでした。
やっぱりその辺で『古典に弱い』という私自身の弱点が出ちゃってるなーと思いました。
にしても、やっぱり『そして誰もいなくなった』という小説はこうやっていろんな人が話題にして新たに物語を展開させていくくらい、本当に素晴らしい作品なんですねー。
以前読んだ有栖川有栖さんの『こうして誰もいなくなった』でも、「名探偵役が不在だということをずっと残念に思っていたから、名探偵を登場させた物を書いた」というようなことがあとがきに書いてあったように思います。

やっぱりみんな大好きなんですねー。
私も大好きです。
この間も読んですごくドキドキしました。
結末はわかっているにも関わらず、です。
描き方があまりにも鮮やかで改めて本当に驚きました。
アガサ・クリスティという作家について、細かいことはほとんど知らなかったので、彼女の自身の人生にもいろいろあったんだなぁと思いましたねー。
最後は『論理蒸発 ノックス・マシン2』。
タイトル通り、1つ目の『ノックス・マシン』の続編なんですけど、なんだかすごく切ない感じの話になっていました。
印象としては『三体III 死神永生』のような感じです。

前作で主人公だった男性は、元の時代に戻ってきた後、散々な目に遭わされたらしいです。
まぁ…そうなりますよね、きっと現実でも。
いろんなコネと偶然と幸運があって、なんとか今の場所までたどり着けたようです。
今回の主人公の女性が彼の元を訪れて、今現在進行している問題について相談し、解決策を乞う話でした。
彼が、自分の残りの人生を使って、その問題を解決してあげることになってしまいました。
彼を探してやってきた女性はとても申し訳なく思ったんですが、まぁ結局彼のおかげで事なきを得たんですよね。
相変わらず、途中に書いてあった難しい話は一切分からなかったですけど(笑)、まぁ雰囲気は掴んだような気がしなくもない…かな、どうかな…。
現在進行形で起きている問題も、正直よく分からなくて…まー「なんか大変なんだろうな」みたいな。
難しい話でしたねー。
いわゆる『読者への挑戦状』がこんな風にキーになるとは思ってもみなかったので、「おもしろいこと考えるなー」と思ってしまいました。
3話とも SF ってことでいいんですかね?
「ミステリーではないのでは?」と思わないでもないです。
もちろんおもしろかったですけど。
2014年の『このミステリーがすごい! 2014年版』の1位に選ばれた作品とのことでした。
やっぱりミステリーなの?
よくわからなかったです…。
Kindle Unlimited で読みました。
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