井上真偽さんの『アリアドネの声』を読みました。
井上さんの小説は初めてです。
『アリアドネ』の話はうっすらですが知っているので、話の流れはなんとなく想像がつきました。
でも、まさかこんな話だとは思わなかったですねー!
引率する役がまさか『ドローン』だなんて!
すごくおもしろかったです。
…表紙の絵を見ればそのまんまなんですが、よく見てなかったー。
最近はドローンの性能は著しく上がっていると聞いたことがあるので、「いろんなことできるんだろうなー」とは思っていましたが…。
こんな風に役立てられるんだ、という驚きがありました。
最近も、八潮市の道路陥没事故でドローンが使われたと聞きました。
この事故に関しては、今まだ行方不明の方がいらっしゃるのでご家族の気持ちを考えるととても苦しいですが…。
これからも、こういう風に災害救助などに役立ててもらいたいですね。
決して、戦争なんかに使わないでほしいですね…。
とあるバリアフリー都市に滞在中、巨大な地震が起きてしまいました。
目が見えなくて耳も聞こえない、だから喋れないという、いわゆる『三重苦』の女性が遭難してしまって、その人をどうやって誘導するのかをみんなで知恵を絞る、というのが話の大枠です。
主人公は幸いそんなに被災してなくて、比較的安全なところから誘導しています。
そんな状況だとちょっと緊迫感がぼやけるかな…と思いきや、手に汗握る感じがすごかったですねー。
途中、いろんな困難がありました。
想定したルートが困難だったり、ドローンが一部故障してしまったり。
そして、救助対象者もなぜか不穏な動きを見せます。
「ひょっとして障害は詐称なんじゃないか?」という疑惑も持ち上がったり。
うん、これは本当に、私も「きっと詐称してたんだ!」と思いました…。
それと並行して、都市に居合わせた昔の友達の妹も行方不明になってしまっていました。
友人からその妹の捜索も依頼されて…もう何が何やらてんやわんやで大変な感じです。
まぁ、実際に地震が起きたときには、きっとこういう感じになってしまうんでしょうね…。
最後は一応丸く収まって終わります。
救助対象者の女性の挙動が途中でおかしくなった理由も最後に明かされて、まさか『そっち』と繋がっているとは! と。
そして「こんな風に人って強くなれるんだな…」と、ぐっと来ました。
自分がとても大変な中、こんな思いをしてまでも他の人を助けていたなんて…。
本当に素晴らしいですね…。
自分が同じ立場だったら、途中で投げ出してしまうかも知れません…。
主人公の男性は、過去に自分の兄を亡くしています。
その記憶がトラウマとなっていて、いわゆる『サバイバー』のような思考になってしまっていました。
いつのまにか自分で、『兄のためにも絶対に一生懸命生きなければいけない』という枷をはめていました。
今回のこの事件でそのことに気づき、少しだけかも知れませんが心が軽くなったみたいだったので、それも本当に良かったなと思います。
きっと、お兄さんもお母さんもそう思っていると思いました。
『アリアドネ』といえばギリシャ神話界隈の話ですね。
あの近郊はなんだか沼になりそうで、本当に表面部分しか知らないです。
今回読み終えてから『アリアドネ』について調べたら、『ミノタウロス』の異母兄妹で、糸を手繰ったのは『テセウス』で、一説にはアリアドネが『ヘーパイストス』の作った冠をつけていたからテセウスがその光を辿って迷宮を脱出することができた、と書かれていました。
…『美濃牛』と『金田一37歳』と『テセウスの船』が一気に押し寄せてきました。


いやー…わっけわかんないですね。
調べだすと本当に沼にハマってしまいそうなので怖いです。
救助対象者が地上に戻ってきて、その姿を認めたときの衝撃、すごかったです。
Kindle Unlimited で読みました。
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