米澤穂信さんの『ふたりの距離の概算』を読みました。
先日の『遠回りする雛』の続刊です。

すっごく意味深なタイトルじゃないですか…。
最初見たとき、「お、ついに奉太郎くんとえるちゃんがくっつくのか!?」みたいな、ちょっとしたウキウキ感があったんですけど…まったくそんなことのない内容で。
まぁ、タイトルと内容との(私の勝手な思いによる)ギャップで、ちょっと残念な気持ちになった本でした。
いや、内容はおもしろかったんですよ。
読んでいる間、なんだかずっと既視感がありました。
あとがきで「『死のロングウォーク』を意識している」みたいな感じのことが書かれていて、「これだー!」と。
話の内容は全然違いますが、長く走る主人公と、その間に考えるたくさんのこと、全体的に漂う物悲しさ(?)みたいなものが、なんだか共通しているなと思いました。
奉太郎くんがダラダラとマラソン大会を走りながらいろんなことを考えて、登場人物たちに途中で接触して話を聞いて、一番最後にそれをぶつける、という感じが、なんというか『リアルタイム』っぽい感じがしておもしろかったです。
今までの話って、なんというかちょっと一歩引いたところから眺めている感じがして、『リアルタイム』っぽさがあまりなかった印象だったんですが、今回は『当事者』感がしたというか。
まぁ…ド真ん中『当事者』かどうかと聞かれると、ちょっと違うかなとも思いますが。
ただ、内容がなんだか悲しいですね。
せっかくいい後輩ができるのかなと思ってたんですけど、それもなくなってしまって残念な気持ちでいっぱいです。
大日向さんは、「心にやましいことがあると、周りの人をも怪しく見える」という、いわゆるよくある疑心暗鬼な感じに陥っちゃっているんですかね。
だから、余計に自分から事態を混乱させるような感じになっちゃったのかな、と。
「たった一人の後輩」みたいな感じで、先輩4人からからかわいがられる妹的な存在になれると思ったのに、とっても残念でした。
まぁ、高校生女子なのに怪しい部活に一人で入部しようとしている時点で、ちょっとだけですが「ワケアリ人物かな」とも思っていましたけど。
えるちゃんの鈍感さは今に始まったことじゃないんですが、ある一面ではものすごく鋭いところもありますからねー。
そこが彼女のいいところだと思うんだけど、今回に限ってはなんか裏目に出てしまったような気がします。
というか、大日向さんは、はじめ里志くんのことを狙っているのかな、とかそっちの方向に考えていましたけど、まぁそんなこともなく。
高校進学で別れて友人関係がぐちゃぐちゃになることって、まぁあるんでしょうねー。
それがちゃんときれいに精算できてないと、日常生活にも差し支えちゃいますね。
この時期の女の子にとっては、特に。
彼女の気持ちが楽になる日が来るといいんですけどね。
やっぱり、そのお友達本人ときちんと話をつけないと、すっきりしないと思いますね。
せっかく一度しかない高校生活だから、楽しんで欲しいです。
というか、いろんなことからここまで導き出せるなんて、やっぱり奉太郎くんは本当にすごいなと思いました。
しかも、走りながら、ね。
いくら『脳を鍛えるには運動しかない』とはいえ、運動の最中はなかなか物事を考えられないですからねー。

「探偵役と言われるのはちょっと恥ずかしい」みたいなこと言ってましたが、いえいえそんなことありません。
十分に素晴らしい探偵だと思います。
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