福田ますみさんの『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―』を読みました。
福田さんの本は初めてです。
福田さんの本は、なにかのきっかけで知った『モンスターマザー』という本を、ずっと読みたいなと思っていたんです。
でも、ノンフィクションなので、読んでいるとちょっと疲弊しちゃいそうだな…ってずっと思っていて。
ここ最近読んだノンフィクションだと『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』でしょうか。

これも、読んでいて内容はもちろんおもしろいんですけど、やっぱり「ノンフィクションなんだよな…」と思うと気持ちが塞ぐんですよね…。
実際にあったこと、なわけですからね。
でも、この『でっちあげ』が今度映画化されるって聞きまして。
しかも偶然、『恥さらし』の映画化である『日本で一番悪い奴ら』の主演だった綾野剛さんが、この映画『でっちあげ』でも主演とのことで…。
先にこちらの『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―』を読んでみることにしたわけです。
いやー…一気に読んでしまいました。
というか、「そうせざるを得なかった」というのが正解だったかもしれません。
途中でやめてしまったら、読むのを再開できなさそうな気がしてしまったので…。
序章は、『原告側』の供述の通りに場面が展開されます。
横暴な教師、か弱く怯える児童。
読んでいてものすごく嫌な気持ちになる内容です。
21世紀の今の時代でも、まだこんな教師がいるのか、と怒りを覚えそうな。
でも、本編からは、一変して『被告側』の証言に基づいて構成されます。
『原告側』の訴えがいかに『事実無根』であるか、1枚1枚丁寧に薄皮を剥いでいくように明らかにされていきます。
もちろん、この本も『マスコミの人』が書いたものなので、「本当の本当の本当の本当はどっちが正しいかというのはわからない」と言えるかもしれないです。
でも、まぁそんなこと言ったら大半のものはそうなってしまうわけだし、この本の方が『より事実に基づいて確からしい』といういろいろな証言や証拠が出てきているわけなので、一応こちらがが真実なんじゃないかなって思いながら読みました。
しかしね…本当に怖いです。
やっぱり、今はもはや『全録』の時代なんでしょうかね…?
本当に、『でっちあげ』られたときに、何の釈明もできないです。
怖い。
『PLAUD NotePin』ってデバイスあるじゃないですか。
本気で「それ買おうかな」って検討してしまうレベルです。
うちの息子は発達グレーですし、発達障害の人は詐欺被害に遭いやすい傾向もあるらしいので、息子には買ってあげたほうがいいのかな…。
あ、でも、より自然な合成音声とか動画とかも AI でできてしまいそう…。
あーー、どうしたらいいかわかんないですね。
しかし、なんてずさんな裁判だったんだろう、と素人ながらに思ってしまいます。
こんなことで人生を破壊されかけた(いや、「された」でいいのかな)この男性教諭が、本当にかわいそうだなと思いました。
周りの評判が悪くなかったみたいなので、きっと先生も悪い先生ではなかったんだろうと思います。
もちろん、この先生も聖人君子ではないから、何かしらちょっとはしたかもしれない。
でも、大半のできごとは、まさに『でっちあげ』なんだろうな、と。
本書の最後に『追記』という形で書かれていましたが、最終的にはそれらがちゃんと全部認められて、懲戒処分も全部取り下げられたそうです。
その一文で、ようやく最後の緊張が解けました。
裁判終了前から小学校でも働けるようになって、本当に本当に良かったなと思います。
モンスターペアレントに屈せずに、自分の勝利を信じてがんばってきた甲斐がありましたね。
にしても、本人ももちろん辛かったとは思いますが、奥さんとお子さんを思うと本当に頭が下がります。
自分が同じ立場だったら、ちゃんと夫を支えることができたかなと思ってしまいます。
奥さんのことはあんまり書かれていなかったですけど、離婚などをすることもなくてよかったです。
奥さん・お子さんが精神的にちゃんと立ち直っていることを、願うばかりです。
私自身が小学生の時よりも、今の時代の方がはるかに『先生の立場・地位』的なものは下がってしまっているというのは感じるような気がします。
私が小学生のとき、学校の先生はもっと偉そうでしたし、もっと傍若無人でした。
ひどい先生とかもたくさんいました。
授業も何をしゃべっているのかわからないような先生もいましたし、保護者に向かって「就職できなかったから先生になった」なんて堂々と言っていた先生もいました。
今は…本当にすぐに平身低頭で謝罪されますし、なんか本当に申し訳ないなと思ってしまいます。
…我々は学校にいろいろ期待しすぎなんだろうな、と思います。
児童・生徒30人以上を一人で見なければいけないっていうのは、やっぱりプレッシャーですよね。
それを毎日、毎年、定年までやり続ける学校の先生というのは、本当に大変な職業だと改めて思います。
親の方も、まともな親ばかりではないってのは、自分が親として小学校に関わっていく上で何度か思いました。
それは、自分自身もちゃんと心しておかないといけないと思いました。
今回、何でこんなことに巻き込まれてしまったのか、本を読んだだけでは原因がまったく分からなくて。
本当に本当に、ただ『でっちあげ』られたという感じで怖いです。
やっぱりつくづく『証拠の時代』なんですね…。
申し訳ないですけど、この原告側の夫婦に、何かちゃんとバツが下るといいな思ってしまいます。
…この奥さん、何か『病名』がつく感じの人ですかね…本当に怖い。
弁護士の先生方も、別に「だましてやろう」なんて気持ちで550人も集まったわけじゃないと思いたいです。
でも、調べればいくらでも疑問が湧き出てきそうな内容にもかかわらず、550人も集まってしまったというのは、一体どういうことなんでしょうか…?
それだけ、この奥さんの説得力がすごかったんでしょうか?
それとも、いつもそんなずさんな仕事をしているということなんでしょうか?
それともそれとも、なんとなく「勝てそうな方」に便乗しようとしただけ?
マスコミの記者も、裁判が始まったらまったく現地に行かなくなった人など、本当に書くだけ書いてぽいって感じなんですね…。
もちろん、以前読んだ『殺人犯はそこにいる』という『北関東連続幼女誘拐殺人事件』を扱ったノンフィクション、『ある行旅死亡人の物語』のように1つの出来事を丁寧に追って書かれた本などがあり、私もそれらを読んでいるので、『マスコミ』と一括りにしたくない気持ちもありますけど。


一方で、本書にも出てきましたけど『松本サリン事件』のような報道からの冤罪もあるわけで、自分自身がどのような心構えでいればいいのかがよくわからないのも事実です。
ちょうど綾野剛さんがなんか目が充血したすごい顔でこっちを見ている写真を見て、「何か新しい映画に出るんだな」って、ほんとそれだけのイメージでした。
まさか、こんなヘビーな話だったとは。
この先生は、一気に読まないと私の精神が持たないようなこんな内容を、もう何年間もがんばってきたんですね。
すごい話でした。
読んで良かった、とは思います。
ただ…ちょっと映画館に観に行くのはしんどいかもしれない…。
もう1回この物語を追体験するのは、結構つらいかもしれないですねー…。
最後が分かってるからまだマシですけど…どうしようかな、と思っているところです…。
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