中山七里さんの『こちら空港警察』を読みました。
中山さんの小説は『祝祭のハングマン』以来です。
『空港警察』ということで普通の警察とどんな違いがあるのか、と思いながら読んでいました。
なるほど、繁華街などとはまた違った毛色の事件ばかりで、やっぱり場所柄ってあるんだなーと。
連作短編集になっていて、全部で5本入っていました。
この空港で働いているグランドスタッフの咲良(さくら)という若い女性の視点で描かれていましたが、違う人の視点で動くことも。
最初は『セレブリティ』。
高頭冴子刑事が出てきましたが、『逃亡刑事』の冴子さんですよね?
相変わらずお元気そうで、普通に仕事されてて安心しました。
時系列的に、『逃亡刑事』の前なのか後なのかわからないですが…。
まだ読めていませんが、続編の『越境刑事』もあるんですよね。
咲良がちょっと幼すぎるなっていう印象で、今のところあまり好きになれていないです。
あと、サブタイトルの『セレブリティ』という言葉とこのお笑い芸人とが、あまりよく結びつかないというか。
やっていることのセコさが浮き彫りになった後は余計にねー。
本来の『セレブリティ』は『名声を得ている有名人・名士』という意味ですから、合っているはずなんですけどね。
仁志村さんの言う通り、貧しくても犯罪はしない人もいるし、お金持ちでも簡単に犯罪に手を染める人はいるので、芸能人だからといってそれに当てはまらないというわけじゃないです。
その辺は、航空関連会社に勤められるような咲良にはわかっていてほしいと思ってしまいます。
次は『ATB』。
『Active Time Battle』ではなく『Air Turn Back』、離陸後に機体トラブルなどが起きて空港に引き返すことのようです。
今回は『曲者』が2名いました。
ペットでのターンバックのクレーマーは読めませんでしたが、もう一人のオーディオの部品の方は「多分そうだろうな」と予想がつきました。
オーディオの部品とかって見た目にはよくわからないですしね。
20年くらい前にも、PS2が「軍事転用の恐れがある」として輸出禁止品になるかも、みたいな噂がありましたねー。
あれってどうなったんだろう?
でも、そうやって日本の技術が外国に流れていくんだろうなと思うと、悲しいですね。
以前読んだ『テロリストの家』でも思いましたが、国に損害を与えることは想像しているよりもずっと重罪ですからね。
今回の本人は分かっててやったみたいですが。
咲良は相変わらず仁志村さんに反感を持っているみたいですが、反感を持つ理由は何なんでしょう?
ホスピタリティに欠けるから、とかなんでしょうか。
警察官にホスピタリティを求めてもな…と思ってしまうので、いまいち感情移入できないんですよね…。
3つ目は『イミグレーション』。
今野敏さんの『横浜みなとみらい署暴対係』の時も思いましたが、中国人の工作員っていうのは本当に躊躇がないですよね…。
本当はどうなのかは知らないけど、対面した瞬間ナイフで一斬り、って感じじゃなかった分だけ幸せだったのかもしれないですね…。
そして、カジノで莫大な借金を作って、それを肩代わりしてもらったがために奴隷に成り果てる、と。
小説の出来事だから…と片付けてしまいたいんですが、実際にはあるんだろうなって怖くなります。
やっぱり、文化はもちろんバックグラウンドもすべて違う外国に行くっていうのは、そういう危険性があるんでしょうね。
旅行者側も開放感でいっぱいになっていることでしょうし。
まぁ、引きこもりがちの私にはあまり関係ないですけど…。
本当に、犯罪を犯す犯さないは紙一重なんだなっていうのが、ここでも感じられました。
4つ目の『エマージェンシー・ランディング』と最後の『テロリズム』。
ここは連作のような感じです。
まー、やっぱり空港といえば切っても切れない話題である『ハイジャック』ですね。
最初、解散してしまったアイドルグループの再結成が要求だったので、なんか気が抜けてしまいました。
昔、フライトシュミレーターの真似をしたくてハイジャックしたっていう人もいたから、そういうこともあるのかなと思ったんですけど…。
そうではなく、テロでした。
しかも、首謀者が実は外国国籍で…というちょっと複雑な話だったので、「そこまでよくぶっこむな…」と思いヒヤヒヤしながら読みました。
うちの息子も飛行機・空港が大好きなので、成田空港ができたときの事件などは概略だけでしたが知っていたんですが、それが少し理解の役にたった感じでした。
話にも出てきましたが、思想犯は基本的には純粋で、一つのものに対する入れ込み方が狂信者みたいになってしまうため、悲しい事件が起きてしまう、と。
だから、今回の実行犯だった3人については、まぁかわいそうだったのかな、とは思いますが…。
一応未遂で終わったので、どれぐらいの罪になるのかはわかりませんが、どうなんでしょう?
『見せしめ』として結構きつめにしてほしいっていう気持ちもあるし、「彼らも騙されてたんだから」と軽くしてあげて欲しいという気持ちもあるっていうのは、なんか複雑です。
それにしても、みんな「仁志村さんに対する見方が1日のうちでコロコロ変わる」とか言うんですが…。
だって警察官ですよ?
私だって、そんな日常的に警察官と触れ合うような生活じゃないから分からないですが。
警察官の皆さんは犯罪者を追いかけて必死で仕事してる人たちなんですから、そんな単純に腰が低いだけの人なはずがないですよね。
ちょっと空港職員の方々、人を見る目がなさすぎるんじゃないか、と思ってしまいました。
平和なのかな…?
でも、やっぱりこの一冊で『空港』というところがやっぱりすごく大変な場所なんだな、とよくわかったような気がします。
麻薬などは国内でほとんど作られないから、空港で水際対策をすることで、ほとんどが国内に入ってこなくなるっていうのは、なるほどなと。
もちろん海路もあるでしょうけど。
私たちが日々安全に平和に暮らせているのは、こういう方々のおかげなんだなと思うと、頭が上がらないです。
警察官も空港職員も大変なお仕事ですが、頑張っていただきたいなと思いました。
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