中室牧子さんの『「学力」の経済学』を読みました。
中室さんの本は初めてです。
テレビで話題になっていた本、だったそうなんですが、そういう前知識は一切持っていない状態で読みました。
タイトルからして、「どういうルートで子供を教育するのが1番コスパがいいか」みたいな本なのかと思ってたんです。
例えば、公立小中高に行ってそのまま東大に入るとか。
…ま、それができるなら、それが一番コスパがいいに決まっていますけどね…。
でもそういう話ではなく、どういうことをしたら一人の子ども、地域の子どもたち、国全体の子どもたちの学力が上がって国が強くなるか、という話でした。
ちょっと思ってたのとは違いましたけど、それでもすごくおもしろかったです。
あとがきに、中室さんの講演会を聞いて「子供が小さいうちに聞けて良かった」と発言していた保護者の話が書いてありました。
まさにその通りだと思いましたねー。
うちはすでにそこまで小さくなくて、上の子は中学生になってしまいましたが、それでも知ることができてよかったなと思うことがたくさんありました。
しかし、日本の政治や行政は、実験や科学的根拠に基づかないで、感情や雰囲気やしがらみなんかでいっぱい決めちゃっているんだろうな…と思ってしまいます。
今までもそう感じてはいましたけど、この本を読んでより強くそう思いました。
少人数制のクラスの話とか、タブレット学習の話とか、なんか「やったら良さそう」という『雰囲気』はビンビンしていますからね。
でも、実際はそうやってエビデンスに基づいていない感じだったんだな、と。
特にタブレットについては、『運用』が間違っているような気がするんですよね…。
北欧の方では「紙に戻す」という動きが大きくなってきているみたいですが、まぁそれはそれとして。
「紙がそれがいいのかタブレットがいいのか」というのはいったん脇においておくとしても、結局『電子化された教科書』なんて渡されていないんですよ。
地域によって運用は違うと思うんですが、うちでは現状『重い紙の教材』+『カバーとキーボード付けたタブレット』を持って行かされています。
子供たちは重い思いをしているだけなんですよねー…。
「何のためのタブレットなんだろう」と、すごく感じます。
運用が始まってもうすでに数年経っているわけですからね、もうちょっと上手い使い方をしてほしいと思ってしまいます。
だって、支給の iPad 本体、本当に重いんですよ。
カバー付きキーボード合わせると1kg 以上あります。
毎日持っていかされるのかわいそうなんですよね…。
教科書が何冊もなくなって軽くなるんだったらまだ分かるんですけど、今までにプラスですからね…。
副教材として優秀なのはわかるんですけど…学校で預かってほしいなー…。
毎回回収してくれる地域もあると聞いて、うらやましく思っています。
それから、「ご褒美で釣ってはいけない」という昨今の風潮についても書かれていました。
私自身、小さい頃から結構ご褒美をもらっていたタイプだったので、その風潮に疑問を持っていました。
だって、大人だってご褒美というか対価としての賃金労働はモチベーションの一つですよね。
「今の仕事、お金もらわなくてもやる」って思っている人、一体どれだけいるんでしょう…。
だったら、子供がご褒美でモチベーションを上げるというのは「なんでダメなんだろう?」ってずっと思っていました。
私は陸上競技をやっていたから、大会で1位取ったときに『ワンダープロジェクト J』と『MOTHER2』を一緒に買ってもらって、すっごく嬉しかったの覚えています。
中古でしたけど。
まぁ、仮に買ってもらえなかったからといって「次は手を抜こう」なんて思わないです。
「モチベーションにはなるな」っていうのが感想なんですよ。
だから、私はご褒美をあげていましたし、今回の本でそれは別に間違ってはいないということがわかったので、それも良かったなと思いました
「アウトプットではなくインプットに対してご褒美を与えるべき」「やることが明確になっているものに対してご褒美を与えるべき」というのは、なるほどなぁと思いました。
それから「褒めて育てる」という教育法、ずっと「褒めてばっかりいると偉そうな子になりそう」って思っていましたが、それについてもちょっと書かれていました。
やっぱりその感覚はそんなに間違ってなかったんだな、と。
もちろん、けなしてばかりいるのは虐待になりますし、まったく褒めないもおかしいんですが、何でもかんでも褒める・認めるみたいなのは、やっぱり良くないんだなと。
「悪い成績を取ったにも関わらず褒めてしまうというのが、自尊心をむやみに高めてしまって、根拠のない自信を持つ人間になってしまう」というのは、本当にそうだと思いました。
『教育経済学』というジャンル、正直今回初めて知ったんですけど、もっと知名度が上がってそれによっていろんな人たちが協力してくれるようになったら、国全体がもっと良くなるんじゃないか、というのは本当に感じました。
ただ、やっぱり難しいのが「エビデンスは欲しい、でも自分の子供を実験台にしてほしくない」という気持ち、ですよねー…。
だから、本書の中でも言われていましたが「今年1年は対象群にして、次の1年は比較群にする」のように、必ずどの子供も対象になるような措置がされているのはいいですね。
まぁ、それでも嫌がる人はたくさんいるだろうなと思います。
でも、トンデモ施策が【 勝手に 】実施されてしまうこともあるわけですし、少しの不公平はもう割り切ってやっていかないと、正しい方向へ進んでいくことができないような気がします。
本書を読んでいて、大体はおもしろくとても為になりましたが、2点だけ疑問に思ったことがありました。
1つが『マシュマロ実験』について。
マシュマロ実験は、最終的には「その子が今まで安全に待っていられる環境で生活してきたかによって左右されてしまう」っていうのが最新だったと思っていました。
最初に実験した集団は『スタンフォード大学内の保育園』、「親が教育熱心」という偏りがあったということなんじゃなかったでしたっけ…?
なので、記述が不足していないのかな、と思いました。
あと、こっちはどうでもいいことなんですが、『コピーロボット』について。
確かに、その直前で出木杉くんとのび太の比較の話をしていましたから、そのまま『ドラえもん』と持っていくのは自然だとは思います。
でも! コピーロボットは『ドラえもん』よりも『パーマン』なんですよ!
ドラえもんでも「パーマンが使っている」というセリフがあったとか。
…私はドラえもんはあまり好きじゃなくて、パーマンは大好きなので、一瞬何を言われているかわからず混乱してしまいました。
まー、内容とはまったく関係ないですけどね。
すごく内容がおもしろくてためになりました。
まさに、あとがきにあった保護者のような感想を持ちました。
話題になるのもうなづけるなぁ…と。
中室さんの別の本も購入したので、そのうち読もうと思っています。
Kindle Unlimited で読みました。
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